今週のデジタル書籍トピックス(2023/10/9)

デジタルブックトピックス

Spotify、オーディオブックを本格展開 有料会員に15万冊以上

このニュースはとても興味深く読みました。Facebookでシェアしたのは英語の記事でしたが、Impress Watchで日本語に翻訳されたものが公開されていたのでこちらをご紹介します。 Spotifyの記事はよく見ますね。マーケティングやサービス開発が活発ということなのでしょうね。

この記事は、同サービスの有料版の会員に15万冊以上のアイテムがあるオーディオブックを月に15時間聴くことができるサービスが提供されることになった、ということです。(まずは英・豪国)有料会員の方は音楽に加えてオーディオブックも聴けるなんてラッキーよかったね、というニュースなのですが、私思うにこのサービス提供開始で業界に大きい2つの影響が出てくるのではと考えます。

サブスク耳の部門をspotifyが握る!?

ひとつ目はサブスクサービスの競争が新しいステージに入ってくるのではないかということです。音楽の楽曲をストリーミング配信する先駆けで、音楽サブスクといえばここ、という存在感があるSpotifyがpodcastというリピート利用の箱に加えてオーディオブックにも参入し、今回サブスクのメニューに加えたことで晴れて?amazon primeと正面から競合することになるのではないかと思うのです。耳のコンテンツはウチで!みたいな感じで。amazon primeは物販の送料無料から始まりPrime Video (映画やテレビ番組のストリーミング)、Prime Music (音楽ストリーミング)やPrime Reading(電子書籍)など会員は無料で利用できるコンテンツを拡大してきました。MusicやPhotosなどはいわばPrime会員はライト版、お試し版的な位置付けで利用できる形になっており、がっつり使うにはそれぞれのunlimited版に登録する必要があります。特にPrime Readingは銘柄もかなりピンポイントで限定的かつ一銘柄の投入期間が短いので、読み放題サービスと感じている人は少ないのではないでしょうか。primeは音楽や映画、書籍などの様々なコンテンツをつまみ食いできる稀有なサービスで、それが映像でがっつり競合するNetflixやhuluとの差別化になっているのでしょう。あまりマニアックではなくライトに話題作品を楽しみたい人にとっては神コスパのサービスであることは間違いありません。そこに、音楽配信では最大のユーザーを持っているSpotifyが15万冊のオーディオブックを開放した。さて、どうなるか。

私は、通勤時に歩く時や土日の散歩中にオーディオブックを聴いています。読書の気分ではない時は音楽を聴くこともありますが、とにかく歩く時間を確保していて、その時間は何かしらイヤホンで聞いている。映画やドラマは疎いのであまり見ないが話題になると好奇心はわく程度です。そんな、目よりやや耳に傾斜している私が今回のSpotifyのリリースを見てどう反応するだろうか。日本はまだ蚊帳の外ではありますが、現地の民になったつもりでシミュレーションしてみましょう。

サービス名利用料金日本円換算サービス内容
amazon prime14.99ドル/月2,236円送料無料・映画・ドラマ・音楽
audible plus7.95ドル/月1,185円1万以上のaudiobook聴き放題
audible premium plus14.95ドル/月2,229円1コンテンツコイン+audible plus
spotify premium10.99ドル/月1,639円音楽・podcast・15万audiobook15h
サービス金額と為替は2023年10月9日のものです

audibleは日本と米国でサービスの違いがいくつかあるのでまずはそこから。日本ではワンプライス1,500円で対象商品(ラインナップのほとんどは対象商品)が聴き放題。対象外の商品は会員価格でディスカウント購入できる。米国ではかなり絞られた1万タイトル程度が聴き放題のplusプラン、そして月に一枚もらえるコインで全商品(例外あるかも)と交換できる他plusの聴き放題がつくpremium plusがある。というわけで単純比較はできないのだけれど、自分が同国で同じような状況だったらどう考えるだろうか、想像してみることにします。

私の生活スタイルとサービスを利用する理由を現地サービスに当てはめてみましょう。amazon prime はまあ、流れで加入していて、時間があるときにprime videoを楽しんでいる程度。年に数回買い物をするので送料無料はありがたい気もするが、買う時は機材系とか最初から送料無料のものが多いんだよね。musicはシャッフル再生が気に入らないので使っていない。prime readingは読みたかったものにハマればラッキーだけどそのために定期的にチェックするには至らない。photosは画像ファイルが容量無制限はありがたい。でも動画は対象外なのでこのサービスだけで完結はしない。結論づけると、primeのいいとこは使っているが、依存しているサービスがあるわけではない。

そしてaudibleのサービスメニューからはpremium plusをチョイスするだろう。月2,000円以上するのはなかなかだけど、私はaudibleで月3〜4冊聴くのである。正直元は取れすぎるほど取れている。書籍の単価も高くなっていますしね。オーディオブックはもちろん読みたい本がオーディオ化されていたらそれが一番いいことだけど、指名で探すとなくてがっかりすることが多い。なのでストア内で回遊しながら次の一冊を探すことが多い。というわけで聞き放題の選択肢が多いのが一番ありがたい。

という前提条件だった時に、迷うのは
amazon prime + audible premium plus(4,465円)
amazon prime + spotify premium(3,875円)

のどっちにしようか、でしょう。前者は選択肢が多いのはコインで交換できる月1アイテムで、あとは1万の中から選ぶわけです。後者はそもそも15万タイトルの選択肢がある。ジャンルの偏りとかポッドキャストとの比率などもあるかもしれないが分母は大きい。そして前者より月500円以上安い。これ、ちょっと試しに乗り換えてみようかと思うきっかけになるぐらいの条件だと思います。

さらに、もし私がNetflixのような映像サブスクに入っていたとするのならば、さらに新しい選択肢が生まれるのではないか。

Netflix(2,309円) + spotify premium (1,639円)=3,948円

これ、かなりリッチな感じがしますよね。ネトフリとスポティファイはそもそもそれぞれ本業で質量十分。spotify premiumのオーディオ15万アイテムが自分にとって納得いく内容であれば有力な選択肢になると思います。これでprime listeningみたいなオーディオブックのサービスがあったらまた悩ましくなると思うのですが、単純にアイテム数だけで考えると今回のspotifyの発表は「おっ!」ってくるのではないかと思います。ユーザーのコメントまでは拾ってないですけど。伸長が続く欧米のオーディオブック市場で、しのぎの削り合いが激しくなるのは全く不自然なことではないですよね。

オーディオブックの聴き放題、利用時間の従量制が加味される?

さて、記事の長さがいい加減自分のイメージの数倍に膨らんでしまってどうしましょう状態ではあるのですが、今回のニュースでもう一つ「これをきっかけに変わるかな」というポイントがありましたので触れてみたいと思います。それが、「利用可能時間は毎月15時間までで、10時間の追加購入が可能。」の部分です。これ、スマホのプランでもありますよね。段階的な従量制みたいなの。ストレージもそうですよね。実際使ってるんだから払おうねということではあるんですが、妙に納得感があったので書いておきたいと思ったのです。Spotify premiumは音楽聴き放題なわけですよ。大好きな曲を起きている時間ずっと聴いても、なんなら寝ながら聴いても定額です。10回再生しても、1000回リピートしても。それがチャリンチャリンとアーティストなどに還元されるわけですね。もう音楽コンテンツというか音楽業界のソフトがこの形式中心になっているので不自然には感じられなくなりました。もちろんエンターテイメントとしての書籍もありますからオーディオブックもそういう側面はありますが、まだまだ紙と電子書籍というメディアとに需要がありその中でバランスしてビジネスをやっていかなければならない出版業界にとって、全ての作品を音声化してサブスクに投入してしまうと収益が下がる可能性がある。ですのでこの従量制というのはコンテンツの数を維持して継続できる条件ならばとてもいいと思いました。映画などの映像作品に公開媒体のフェーズ、課金形式のフェーズがあるように、そのコンテンツに相応しいサービス料金と収益があると思うのです。そのような意味でも大きな一歩なのかな、と。15時間って本にもよりますが3〜4冊ぐらいかな、普通に満足する人がほとんどだと思うけど、ヘビーユーザーがどれだけ新規に生まれるか、ですね。

というわけでえらく長くなってしまいましたし最後の考察は目線が出版社よりになってるなあ、と思いつつ。このネタは追いかけていきたいと思います。


Voicy、ボイスドラマやオーディオブックを1日5話以上無料で聴ける新機能 「¥0+」が登場

LINEマンガが最初にはじめたような記憶がありますが、縦読みコミックでは一般的になっている23時間経つと次の一話が無料で読めるサービスがあります。Voicyにもこの機能があったのですが「ボイスドラマ」や「オーディオブック」に関してはさらに拡充して「¥0+」チケットを使うことで有料コンテンツを追加で無料で読めるというもの。これはクリエイターさんがチケット対応の不可を設定する、ということなんでしょうかね。チェックを怠っていた私は、Voicyにボイスドラマやオーディオブックというジャンルがあったことすら知りませんでした。確かにボイスドラマ、ありますね。

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