読書メモ:成瀬は天下を取りにいく(オーディオブック聴き比べてみました)

オーディオブック読書

文学賞のエントリー作品を読み比べて受賞を楽しみに待つ、みたいなことはしたことがないのですけれど、受賞作がオーディオブックになっていたらポチッとしてみる、ぐらいには世の中と関わっておきたいと思っています。もう、価値観がクラゲ程度、波まかせというかうつろっているだけですが、きっかけをいただけるのはありがたいことです。「売れているから」というだけではなかなか背中を押されないものなのです。また、もちろん「面白さ」もそうですけど大きな賞を獲るという総合的な運気が強いものに乗る、という縁起をかつぐマインドもあります。というわけで今年の本屋大賞を受賞したタイトル、『成瀬は天下を取りにいく』を読んでみました。もったいぶりすぎて恥ずかしいですね、聴き放題だぞ。

配信されていたオーディブル版を楽しく聴いていたのですが、オトバンクからのリリースを見て、ちょうどキリもよかったので「膳所から来ました」からオトバンク版にスイッチしてみました。

思いのほか、主人公の成瀬の声色が両社版とも似ていたのは偶然でしょうか。オーディブル版はいわゆる朗読のオーディオブックで、セリフも1人のナレーターさんが演じ分けて読んでいる感じでした。会話も多い本書ですが、普通に小説のオーディオブックを聴いている感じです。一方でaudiobook.jp版は音声ドラマ仕立てで、BGMが入ったり、登場人物にナレーターが配役されています。小説とドラマの中間のコンテンツを楽しんでいる、という感覚で聴きました。ト書き部分もそれなりにあるので純粋なドラマを見ている感じではありませんが、リッチ感はありますね。電車の中など外部で音がしている状況ではBGMがほぼ聞こえないので、オフにできればいいなあ、とは思いました(そういうものではないことは承知しております)。

同じパートを聴き比べたわけではないですし、カジュアルに楽しむ気持ちでゆるい単純な感想ですが、私としてはどちら版も満足しました。受賞でさらにベストセラーに拍車がかかっているところで、本作品の内容については世の中にたくさん語られていることでしょうから感想は割愛しますが、テンポがよく痛快な青春?ローティーンからだから青春とはいわないのかな、いずれにしても気持ちいい小説です。空気を読み同調を最上位の判断基準を持つとされる今の若者像からははっきり逸脱する主人公成瀬と、その個性を愛でて、見届けるスタンスながら自分も自然にスタンスを踏み出している島崎。主人公の世代が読み取る感覚と、私が想像力で解釈するところとにどれぐらいの乖離があるかはわかりませんが、主人公の成瀬の飄々とした生き様が、群れに埋没せず、オタクでもない「個」のあり方として共感を持たれている像であるのは、本作がこれだけヒットしていることからも間違いはないのでしょう。

audiobook.jp版はキャスティングもそうですけど、実際スケジューリング、そして収録とか編集とか考えると同じ時間のオーディオブックの何倍の労力がかかっているのか私にはわかりませんが、力作であると同時に楽しいエンタテイメント作品にもなっているので小説読んだ人もこちらでもう一回、もおすすめです。これを最初から「聴き放題」に入れてくれた新潮社さんとオトバンクさんにも感謝。

『成瀬は天下を取りにいく』
宮島 未奈 (著) 新潮社

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audiobook.jpへのリンク
audiobook.jp

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