読書メモ:AIガバナンス入門: リスクマネジメントから社会設計まで (ハヤカワ新書)

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初めてchatGPTを使った時、その応答の速さと正確さに驚愕した。まるで目の前に知識豊富な友人がいるかのようだ。質問の一つ一つに対して、深い理解と洞察を持って答えてくれる。この技術の進歩に心から感動し、同時に少しの不安も覚えた。AIがこれほどまでに進化した現在、私たちの生活はどう変わるのだろうか。しかし、その可能性と便利さに魅了され、次第にその恐れも希望に変わっていった。chatGPTはただのツールではなく、新たな発見と学びの旅への扉を開いてくれたのだ。

と、はじめてchatGPTを使った時の驚きの感情をchatGPTに書いてもらいました。検索エンジンと同じような箱に言葉を入力して結果を見るという行為そのものは同じではありますが、アウトプットが全然違います。ドラえもんは四次元ポケットで困っているのび太くんを助けるための道具を探して取り出します。それは驚異的なことですが必要なものを探して取ってくるという行為は検索に近いかもしれません。それでいうと生成AIは4次元ポケットから部品やらモジュールやらを引っ張り出してフルカスタマイズされた一点もののひみつ道具を瞬時に作り上げる、といった感じでしょうか。いや、違いが分かりにくいですね。四次元ポケットがすごすぎるので。

全く意味をなさない文字列を冒頭に並べてしまいましたが、とんでもないものが生み出されてしまったという感覚は使い始めてすぐに生じました。これどこで学習されたデータなのだろう、大丈夫なのだろうかと。そして世に出た当初は今より盛大に間違えたように思います。自分が知っている領域のことなら間違いに気づく場合もあるでしょうが門外漢のことに関してはそれにも気づかない。これは怖いですね。ウェブの情報は、怪しいものもたくさんあるでしょうがたとえばニュースであればテレビ局が配信している動画、新聞社が配信しているニュースはエビデンスとしての価値があるとみなせるでしょうが、Xで知らない人が発信し拡散されているニュースの正しさを判断することは難しいですね。その点生成AIが紡いでくれるこたえはどこから引っ張り出されたのかわからない、原型をとどめていないものの正確さを担保してくれるのかが不安になりますし、著作権侵害に当たらないかもわからないですね。と、できることの素晴らしさと、その成長の速さと同様に恐ろしさも感じます。だってたとえばSNSのアカウント乗っ取りってあるじゃないですか。乗っ取ったのがAI botを使って好き放題メチャクチャなことを投稿し始めたら、って考えると恐ろしい。なんかできる人がノリで作れちゃいそう、なんなら生成AIのアシストで作っちゃいましたとかになると笑えません。

専門的知識のない私の頭ですらスラスラと不安が湯水のように湧いて出るぐらいですから、これが個人ユースに留まらず、ビジネスで使われる場合を想定するとぐんと複雑になってきます。本書をポチりとしたのはAudibleが始めた合成音声(Audibleではデジタルボイス)を試してみようと思ったからですが、まさにこのデジタルボイスも声の主の無断コピーなどが問題になっていたりします。本書は目次を見ていただければ一目瞭然なのですが、AIの振る舞いとできること、現時点で想定されること、注意しなければいけないところ、今後AIが進化することに伴って社会に与える影響などが非常に明快に整理され、グローバルな見地からの最新の学術的な見解なども丁寧に解説されています。面白いのは倫理面や法律面など私たちが想像しやすいポイントだけではなく、たとえば「生成AIはめっちゃ電気使う」などの側面もあったり、ハッとしました。いわゆる世の中の知識を学ぶために読んでおくべき一冊だと思います。

さて、Audible制作のデジタルボイスをはじめて聴いてみたわけですが、私の感じですと「別に嫌ではない」という印象でした。もう少し具体的にいうと、等速で聴くと機械感が結構あります。機械的、というのは音声そのものというよりは間と抑揚の均一感なのかなあ、と感じました。ただこの違和感は私が普段聴いている1.5倍にするとほぼ気にならなくなりました。肉声のナレーションにその人の特徴があるように、AIナレーションに慣れた、という部分もあると思います。情報を得るという点において特に不満はないですね。音声の質とは別のところで「これはデジタルボイスだ」という頭で意識して聴いていることもあって本書がAIによって書かれていると錯覚する瞬間が何度かありましたねそういえば。

AIガバナンス入門: リスクマネジメントから社会設計まで (ハヤカワ新書)
羽深 宏樹 (著)
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