読書メモ:先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち

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本書のタイトルは新聞広告で何度か見て印象に残っていた。ロジカルな違和感といいますか。先生に、皆の前でほめないでくださいとお願いする理由は、ほめられることで自分が目立つことを嫌がる心理なのではないかと察する。40年前になってしまうが自分が子供の時もそういう空気はあった。なんだかんだ小学生までは皆、というかクラス全員の前でほめられることが、うれしくて誇らしいことだった。ほめられるのも、怒られるのも皆の前で平等に、が前提みたいなところがあった。ほめられることなら喝采があったし、怒られる時は静まりかえるか、ヤジが飛んで笑いになるかどっちかだった。中学生になったら斜に構えるマインド変換がクラス全体に出てきて、ほめられるのは恥ずかしいから見え方的にやめてほしいみたいな変なスタンスが生まれてきた。アウトロー的なものがカッコよく思えてほめられるようなことをするのはカッコ悪いと、究極単純にいえばそんな空気があった。そういう思春期に差し掛かった、青臭くも繊細な心理を読み解くような感じだろうか。とタイトルひとつでタイムスリップしてしまった。

でもサブタイトルを見ると違いますよね。今の若者はいい子症候群であるというのである。症候群というのは皆がそうと思って行動しているというということであるから、タイトルとサブタイトルを続けて読むと、「皆の前でほめてほしくない」が「いい子になりたい」ということですね。これが冒頭のロジカルな違和感です。皆の前でほめられることがいい子であるというわけではないということなのでしょう。ではどういうことなんですか、ということで読んだわけなんですが、想定よりかなりハードコアでした。

著者の専門分野である部分をアカデミックなアプローチで、しかも著者は大学で若者とゼミ等で直接触れあっているという肌感覚に裏付けられているのである。ウソまじヤバくね?と思いましたです。軽妙で面白く書かれているので、へえへえと読み進められるけど、この世代相手にこれまでのリーダーシップ本やコーチングの内容が全く響かない、ということになりはしないか。この世代を動かすのには新しいマニュアルが必要なんじゃないかとすら。いや、人を動かすっていうのもアレですけどね、それぐらい価値観の変化と均一化を感じました。面白かったです。怖かったです。

『先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち』
金間 大介 (著) 海老塚 久蔵 (ナレーション) 東洋経済新報社
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