畑村洋太郎さんの『失敗学のすすめ』は、「失敗は必ず起こるもの」として正面から受け止め、その構造を分析し、次にどう活かすかを考えるという、実践的な一冊でした。工学者として多くの現場に携わった著者が、失敗事例の記録や「顛末フォーマット」などのフレームワークを通して、個人や組織の学びへと昇華させる視点を提示してくれます。
そういえばこれまで読んでいなかった名著の1冊です。もう読む前から「名著」とわかっている本を読むのは、ちょっと緊張があったりします。けれども一方で、「名著だとわかっているから安心して読める」というところもございます。
ある意味、私は「失敗の名人」ではあるのですが、『失敗学のすすめ』をこれまで読まなかったこと自体が、1つの失敗だったのかもしれません。どうでもいいことを言っているようですが、非常に面白く読むことができました。
私は生まれた時から文系で、算数が数学に変わったあたりで、それをはっきりと自覚しました。生物の授業などは面白く受けられたのですが、二次方程式や物理の法則のあたりから、「これは僕が学ばなくてもよいのではないか」「むしろ僕が学ぶことによって地球に害を与えるのではないか」と、いかにも文系的な理屈を立てて、思春期的な拒絶をしていました。
答えが1つしかないものは、それこそ機械にやらせればいいじゃないか——そんな理屈を考えるのは得意でした。ただ、そのツケはすぐに回ってきます。文系の論文でもロジカルに、法則に従って書かなければならないし、仕事を始めてみれば、「これをやるかやらないか」「その理由をどう明確にするか」といった局面に必ず直面します。
これは私にとっては想定外の事でしたが、それもまた文系らしいロジックで逃げ回ってきたのだと思います。逃げ切れていたかどうかは本人である私にはわかりません。
失敗を「ポジティブな武器」としてしっかり定義すべきだという本書の主張から、私は目を逸らし続けてきたのかもしれません。逃げ続けてきたことは、きっと私本人だけでなく、周りの人たちにも伝わっていたことと思います。
けれども、せめて今からでも「組織として失敗の認識をあらためる」動きをしていくことで、少しでもこれまでのツケを相殺できたらと思いましたよ。
本書はaudible版で読みました。
『失敗学のすすめ』
畑村 洋太郎 (著) 講談社文庫


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