読書メモ:知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法

オーディオブック読書メモ

結論をひとことでいいますと、発売された当初(2020年)ではなく、今読んでよかったなあと思いました。理由は二つあるのですが、以前読んで感想を書いた『センスの哲学』からつながってくるものがあったこと。ただこれはどっちを先に読んでもよかったかもしれない。もう一つは、生成AIが出てきた今、よりリアルに本書の内容を理解することができたのではないかと感じたからです。

例によってタイトルを見ただけでポチッとしてしまったのですが、なかなかに大胆というかぶっとんでいますよね。「知覚力を磨く」。五感を研ぎ澄ますようなイメージでしょうか。これは自分の感性や、情報への感度を上げられるような期待をしてしまいます。そして続くサブタイトルの「絵画を観察するように世界を見る技法」ですが、こちらが難解です。なにせ絵画を観察するように世界を見たいと思ったこともないですし、イメージが湧きません。絵画を観察するように世界地図をみてみよう、でしたらアトラスを見るのは楽しいな、とかはあるのですけど。俯瞰する、ということなのか。だとしたら、そのための知覚ってなんでしょう。ダイヤモンド社さんから出版されているということもあり、ビジネス書の顔をしているけど実際は何系の本なのだろうかと探りマインドで本書を読み始めました。

著者の神田 房枝さんのプロフィールの抜粋です。アマゾンのカタログページより。

イェール大学大学院にて美術史学博士号取得。在学中にニューヨーク・メトロポリタン美術館でキュレーターアシスタントを務める。その後、ハーバード大学ポストドクトラルフェロー、ボストン大学講師を経て、ボストン美術館研究員となる。国際美術史学会誌『The Art Bulletin』でのリード記事を含め、多数の研究論文を発表。現在は法人向け教育コンサルタントとして、ビジュアルIQアセスメントを考案。絵画をツールとしながら知覚力・思考力・コミュニケーション力を向上させるトレーニングを、企業・大学・病院に提供している。

美術史を専攻し美術館の現場で働いたのちに大学で教え、法人のコンサルタントに転じている、という唯一無二なルートのキャリアですね。アートとビジネスについては近年論考も多いし売れている書籍もありますが、本書は思考の前提となる知覚を磨くことで不透明な前提条件で意思決定をしなければならない時代の認識力強化についてワークを交えて説明されます。雑にいうと欧米の翻訳書みたいな骨太な本です。美術のみならずリベラルアーツの解説やその流れからの絵画の意味について語られ、とても説得力ありました。また、前提となる知識という意味では今絶賛盛り上がり中の生成AIがあるじゃないかという話もありますが、知識と、知覚を人間が意識して使うことの違いなども今なら比べながら考えられるという意味では、まだ読んでないなら「今でしょ!」な一冊です。

『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』
神田 房枝 (著) ダイヤモンド社

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