欧米のビジネス書でベストセラーになる本の特徴として、しっかりしたエビデンスに基づいた、研究結果といえるような内容が多いといえるのではないでしょうか。『FACTFULNESS』『失敗の科学』などが典型でしょうか。研究内容ではありますが学術論文の形ではなく、一般読者向けの読み物として書かれたものです。本書は、まさにそのような内容です。
認知バイアスという言葉がビジネスキーワードとして目にすることが増えました。人間の思考や判断が、論理的・客観的な判断から逸れてしまう傾向や偏りのことを指すと、AIが教えてくれましたが、バイアスより厄介で大きい存在がノイズであると、本書は説きます。バイアスは前提条件があり、偏向するのに対して、ノイズはランダムでつかみどころがありません。気まぐれも気分も、人の性格や属性によってももたらされるもの、とされています。
人間の判断や振る舞いがいい加減で当てにならないことは長いこと人間をやっていたらまあまあわかることです。優秀な人もドジを踏むし、得意なこと不得意なこともありますし。同じ数学の問題も解けたり解けなかったりすることもあります。これを「にんげんだもの」とおおらかに捉えて人間関係は成り立っているものと思います。
人間関係はお互い様でなかよくすればいいのですが、物理の実験や裁判の結果、医師の判断など一定の均一な条件下で、スペシャリストがルールに従って判断する結果も間違えまくるとなると、これは穏やかではありません。人生の方向や、下手をすれば命に関わることにもなりかねません。でも、あるのですね、それも私たちが思っている以上の間違え率が例として紹介され恐怖を覚えます。プロだから任せて安心、という思い込みそのものがバイアスであるともいえるでしょう。
ノイズがどのように発生するものか、今回はどのパターンによるノイズの可能性があるかを理解し予測することによって、ノイズとうまく共存しなくてはいけませんね。生成AIによる予測、過去のデータに基づくパターン予測とも比べなければいけません。大変です。線虫がん検査とどっちを信じる?サッカーWカップの結果を的中させたタコを信じる?だんだん脱線してきたのでここまでとします。

『NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?』
ダニエル・カーネマン (著), オリヴィエ・シボニー (著), キャス・R・サンスティーン (著) 早川書房
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