読書メモ:世界一流エンジニアの思考法

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米マイクロソフトでAzure Functionsの開発に携わるエンジニアということは、つまりマイクロソフトのど真ん中のシステム、ということは全世界のど真ん中のサービスの開発に携わっているということになりますよね。世界最大級のテック企業の本拠地で働いている現役バリバリのエンジニアが(著者紹介見たら同い年ですよ、とほほ)日本人仕事気質でシアトルに飛び込み、マイクロソフトでの働き方、考え方、価値観をどっぷりと浴び悩みもがき学び挫折し考え方、生活スタイルも変えたりなどのあれやこれやを、「世界最高峰のエンジニアの思考法」としてまとめた本です、ということになります。

世界一流エンジニアの思考法を知りたいですか?と世界一流のエンジニアから聞かれたら私は知りたいです、とこたえるでしょう。それは取材みたいな、もっといえば聞いたことを自慢したいから、そっちに近いマインドかもしれません。将棋の藤井さんとか野球の大谷さんに同じことを聞かれても同じ答えをするでしょう。だって聞きたいですもの。そして、一方でどこかで、「どうせ私には技術的なこと、深いところはわからないので型とか優先順位の考え方とか勝負への感覚とか何かできるところがあったら儲けもの」ぐらいに勝手にハードル下げて消化しやすそうにした上で臨むでしょう。それぐらい専門的なことについては畏怖というか敬意というか、してしまいますね。諦めともいいますが。藤井聡太さんにどれだけ丁寧な指南を受けても、年齢制限は置いておいて将棋指しにはなれないことはわかっていることですので。

そういう意味において、本書は最高にためになる一冊でした。プログラミングの技術を上げる、仕事の効率を上げるという個の学びに関することもありますが、技術そのものの解説ではありません。そこで得意な人にどうやっているか聞く、お互いの強みも知って全体のアウトプットを高めようという文化についてが語られます。納期の価値観、役割分担の感覚、上司部下の関係、キャリアとギャラの考え方、オンとオフについて。ダイバーシティ環境下での働き方。マイクロソフトでの働き方にフィットする方、しない方はもちろんいるでしょうが、テック企業が全世界をターゲットにした巨大なサービスを常に事故なく進化し続けていくことに最適化された発想はとても明快でフェアに見えます。日本の会社や会議あるあるも例に出されて比べられていますが、その箇所はいちいち刺さりました。痛い痛い。

しかし、先日読んだ『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』も、社会見学と実務の効能のハイレベルな2刀流でしたが本書も狙いとバランスがあざとくなく結実している。文春ビジネス書連発で大当たりです。


世界一流エンジニアの思考法 (文春e-book)

『世界一流エンジニアの思考法』
牛尾 剛 (著) 文藝春秋

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