「動物倫理学」という言葉、どこかで聞いたことがあるような、でもやっぱりはじめてかもしれない。そんな気持ちでこの本を手に取りました。タイトルのとおり、本書はまさにわたしにとっての「はじめての動物倫理学」です。
ペットは動物虐待ではないか、というようなコメントが話題になったことがあったと記憶しています。なので、この本もそういった話なのかなと思いながら読み始めたのですが——。
読み進めてすぐに、「それは重要な部分ではない」とピシャリと釘を刺されました。確かにそのような問題も含まれるかもしれませんが、本書のメインテーマはそこではありません。帯にあるキャッチコピーのとおり、本書の中心は動物を苦しめること。具体的には「食肉」についてです。
食肉の倫理をめぐる問い
この本の内容を「とんでもない」「現実的ではない」と感じる読者もいるだろうということについて、著者は前書きでやや強めに繰り返し触れています。私はただ「動物倫理学」という学問について知りたかっただけなのに、そこまで強調しなくても……と思いながら読み進めました。
倫理の本について感想を述べるのは難しいですね。
人間が動物を苦しめること、それが良いことかと問われれば、誰もが「良くない」と答えると思います。私もそうです。
それがどんな動物であれ、命をいただくことに感謝する気持ちは、多くの人が自然と持っている価値観でしょう。改まって道徳の授業で教わらなくても、私たちはどこかで身に付けてきた感覚です。
感謝すれば許されるのか?
ただ、「感謝すれば殺してもいいのか、食べてもいいのか」はまた別の話。それも分かります。
この倫理観は近代哲学の時代から議論されてきたそうで、正直私はそうした背景を全く知りませんでした。
宗教の影響もあるため、日本人にとっては少しフィルターがかかったような、理解しづらい面もありますが、それでも長年議論されてきたテーマだったのですね。とはいえ、私もこの言葉をはじめて聞いたように、それが明確な論点として語られることは、今では少ないように思います。
食肉をめぐるリアルなジレンマ
本書でも述べられていましたが、「クジラを食べるのは悪なのか」といったようなピンポイントの議題はあっても、「食肉そのもの」についての是非を語る場面はあまり見たことがありませんでした。
この問題が難しいのは、「考え」としての倫理観とは別に、私たちが毎日食べて生きているという現実と密接につながっているからです。習慣や心がけだけではなく、「半日後に食べる次のご飯」が半日後に待っているわけです。
実際、本書を読んで私も初めて意識したことが多く、振り返って考えさせられました。「確かにそうだな」と思う場面も多々ありました。
それでも、今日もお腹は減る
ただ、本から離れてしばらく経つと、やっぱりお腹は減るわけで——。
特に何も疑問を持たずに、ハンバーグなどのお肉をおいしくいただいている自分がいます。
「それとこれとは話が別」とすら感じることもなく、普通に食卓にある肉を食べ、また買い物に行ってしまう。タンパク質とらないと、って気にしちゃう。
感想文としてはまとまらないかもしれませんが、そんなザラッとした、後ろめたい感覚。「そう言われたって、現実には無理でしょ」と割り切ってしまっていいのか?という躊躇。
そんな引っかかりを残してくれた一冊でした。本書はオーディブルで読みました。
『はじめての動物倫理学』
田上 孝一 (著) 集英社新書


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