読書メモ:瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す

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 ビジネスは量稽古、という言い方は私が若い頃はよく耳に入ってきました。入った会社のカルチャーというわけではなくて、ビジネス書や雑誌でも普通に言われていました。団塊ジュニアで詰め込み学習世代の私達にしてみれば別に特別なことだとも思わなかったし、逆にそんなに特別に響くこともなかったですね。部活でも反復練習の大事さについては納得がいっていたし、それはそうだろうという風に思っていました。

 一方教育界ではゆとり教育とかその反動とかいう大きな流れがあって、それとは別に創造性とか探究とかというキーワードが取り沙汰されているのを目にします。深掘りしているわけではなくニュースの見出しレベルでの理解ではありますが、大きな流れとしては詰め込む暗記から「自ら考える力」にシフトしているような方向に向かっているといえるのではないでしょうか。個人的には自分たちのやったこと(やらされてきたこと)が否定されたような複雑な気持ちもありますが、正直いってそんなに詰め込みが得意なわけでも、今現在、当時詰め込んだものを覚えているかというとそうでもないので、まあいいか。

 本書でインパクトがあるエピソードであり、かつ内容としても重きを置かれているのが、著者がコンサルタント会社に転職したばかりで仕事を任せてもらえなかった時に、頼まれ仕事でやった「会社四季報丸暗記」でした。過去10年分の四季報の分析です。もちろん、暗記するのがミッションではなく分析することで、結果頭に入っていった、という話です。そしてそれがコンサルタントにおいて事例研究として武器になり提案の引き出しが増えていった、というお話なんですが、著者は全てサクッとネットで調べられる時代になった今でも、大真面目にこのメソッドを推薦しています。確かに比類なき武器になるのは納得がいきます。

生成系AIが注目を集めている中、なくなってしまう仕事は何か、これからどんなスキルを持っていれば生き残れるか、みたいなネット記事が飛び交っています。彼らとて人間が依頼しなければ一歩も動かないわけで、高度なことをやってもらうには高度なリクエストをしなければならないわけです。つまり、その勉強をしておく必要があるのですね。また、探究や考察にしても当然ゼロイチはできないわけで、仮説を立てるための知識が前提となります。考える力も知識も、どっちも必要で、逆にAIが全部知ってるんだったら自分が覚える必要ないな、と勉強を放棄するのは危険だ、という見方もできるかもしれません。

四季報丸暗記がパンチがあったのでこれに絞りましたが、他のエピソード、事例も勉強になりました。

『瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す』山川 隆義著 かんき出版
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