読書メモ:ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法

オーディオブック読書

ネット広告に関わる人全員に本気でおすすめしたい本ですと先に宣言しておきます

 本書に関しては読書メモ番外編としてねちっこくご紹介したいと思います。私はこのブログとは別にnoteで出版業界や自分の仕事に関わるところについて発作的に書いたりすることがあるのですが、この本はそちらも半分、読書ログとしてこちらも半分あるかなあと思います。番外編というのは、本を読んだよというログから大いに逸脱する気が満々だからです。私と同じような仕事をしている人。ネット広告運用を任された、とか広告エージェントに運用を依頼している担当者、またはネット広告のエージェントの方、ガチでおすすめしたいと気合いを入れて臨んでおります。といっても基本書きたいことを勝手に書きますのでレビューから大きく脱線する可能性もございます。毎度のことですがご了承くださいませ。

アマゾンのカタログには自然な広告がさりげに入っている

 ここでもちらっと書いたことがありますが私は某出版社でネット書店の売上を上げるべくあれこれと試行錯誤している、錯誤しまくる日々を送っています。みなさまも本に限らずアマゾンでお買い物をされる、買わなくてもストアを見ることはあるかと思うのですが、検索したりブラウズしたりしているとスポンサーと小さく書かれた商品または商品群が目に入ってきます。これがいわゆる広告です。ただアマゾンの場合、いやでも目に入ってくるようなプッシュ型の広告枠然とした露出ではなく、「こちらもおすすめ」枠や検索結果に紛れ込むような表示になっており、また表示されている商品や検索結果に沿った商品が広告として出るため、広告ではあっても悪目立ちしないというか、ユーザー目線で不自然に思わないように配慮がされている「今どきのネット民に嫌がられない高度にソフィスティケイトされた上品な広告」といえるのではないでしょうか。一方でスマホでニュースを見た時にうっかり関連記事などを見ると「こんなん出していいの?」と驚くぐらいお下劣な広告が新しいウィンドウで出てきて、かじかんだおじさんの太い指ではあの右上の小さな×を上手に押すこともままならず、かえって画面上の被害を拡大させてしまう上に「このようなコンテンツが好きなおじさん」とつめあとも残してしまう結果になりがちです。そういう意味ではアマゾンの広告はコンテンツとしても成立させている三方よしのモデルといってもいいかもしれません。あまり積極的にはいいたくはありませんけどね。

広告のレポートと効果測定の生温かい関係

 検索エンジンの検索結果に表示されるリスティング広告というのはブラウザのChromeが生まれるずいぶん前からありまして、こちらも自分たちのサイトに上手に誘導しようとキーワードの入札競争が生まれました。いかにコスパよく広告を表示させ、クリックしてもらうかしのぎを削ってきました。プラットフォームなどの巨大なサイトにはビルの屋上に看板を一定期間掲出するような形でのバナー広告は昔からあり今もありますが、規定のサイトの特定の枠の期間売りは少数派になり、バナーの表示ロジックもビッグデータの計算によって制御されるような形になってきました。さらに時代は進んで、アマゾンのような巨大なECサイトに、メーカーがこぞって広告クライアントしてお店に自社商品の広告を出しているという状況になってきたわけです。媒体の特性と広告のマッチングや入札とのロジックは高度になっているのは間違いないでしょうが、昔も今もレポートの骨格は変わらずシンプルです。

いくらお金を使って、いくら見られて、いくら押されて、いくらの売上が立ったか。

ということに尽きます。表示される期間に対して課金されるタイプと、表示に対して課金するタイプと、クリックに対して課金されるタイプと条件は違いますが、レポートの内容は基本これです。

昔話ばかりになってしまいますが、ネット広告が出現するずっと前から行なってきた新聞広告や雑誌こう広告、交通広告はこのようなレポートはありませんでした。広告が出てからの販売レポート(POSデータ)を見て、それまでよりどれぐらい上がったかな、これぐらい上がったということはいくらぐらいの広告効果があったんだな、今回はまあまあよかったね、出した甲斐があったねと、まあそれはざっくりすぎるにしても厳密な費用対効果を算出する術もなく、このようなのどかな感じがコンセンサスでございました。ネット書店が出現し、ネット広告というものも現れました。そしてネット広告金額が急上昇して既存の広告媒体を脅かしているみたいなニュースがこぞって書かれ、提案されたバナー広告や記事と組み合わせたタイアップ的なものも試してみたりしました。後日レポートというものをいただくのですが、え?という結果でした。マークシートの書き方を根本的に間違えた時の模擬試験の結果のようでした。売れている商品やシリーズを選んでいるとはいえ、プラットフォームの間口から考えたら十分にニッチな書籍はネットには向いていないのかな、とまだまだセグメントも十分ではなかったネット媒体へのバナー広告掲出体験は、金額こそささやかでしたが惨敗感と「ネット広告は我々の商品とあっていない」という強力な先入観、そして「ネット広告は成績表が送られてくるのだ」という厄介な事実を得て、終わったのでした。

ネット広告の忘却期間

そのうちにネットではブログという便利なコンテンツ更新システムが登場し、今でいうところのローコードで色々カスタマイズできる、なんなら広告も挿入することもできて儲かるかもしれないよ、と乱暴に端折るとそのようなものができました。ココログ、はてな、JUGEM、楽天日記、bloggerどれにしようかな、本格的にやるならmovable typeというのが上級者向けだがあるらしいよ、の頃です。その後FacebookとかMyppaceなどSNSという説明のしにくいものが出てきて、当時はmixiの実名版みたいな紹介のされ方をしていましたが、個の発信力を拡大するツールとしてあっという間に普及しました。ショートテキストのtwitterや動画のYouTubeなども加わって、情報発信元としてのメディアが相対化され、インフルエンサーという新しい価値提供者の影響力が増しました。そんな中、素直で好奇心がある人たちは会社アカウントで各SNSを立ち上げ、ユーザーとつながろうと試み、効果的な発信とフォロアーを増やす術を学び、バズを生み出そうと試行錯誤を重ねました。企業アカウントからはなかなかバズらない、逆に企業が燃えちゃうと大変、などがわかってきて、SNSは無難に、上手に運営しつつインフルエンサー起用やキャンペーンに関しては無理せず相性がいいものを厳選しておこなうぐらいがよし、というなんとなくのムードが出来上がってきました。企業はエンゲージメントやロイヤリティを保つツールとしてあまり攻めずに運用、という役回りが醸成されてきたように思います。そしてその間、ストア内の商品広告も進化していたのですがそちらに目がいっていなかった期間でもありました。

コンテンツSEOとリスティング広告との関係

 SEOという検索エンジンさんと友好的にサイトを成長させていくためのウェブ運営のお作法がありまして、色々研究されて議論されてきましたが、結論としては扱う内容を問わず、サイトで誰に何を伝えたいかということを明確にして、それが見にくる人に的確に伝わるように道順を作り必要なところは目立たせて、伝えるべきところをきちんと読んでもらえるように配慮するということに尽きるのではないかと思います。それはウェブサイトの構造が案内役の検索エンジンにもわかりやすくナビできるように配慮されているか、そして案内板はしかるべきところにしつらえてあるか、またその案内文はわかりやすいか、というような「当たり前だけど大切なこと」です。ウェブの構造やメタ情報、コンテンツのキーワードなどにあたるものです。

 書籍ってあらゆるテーマのものを扱っています。何せ言葉や絵などで表現するわけですから言語化絵画化できるもの全てが書籍のテーマになり得るわけでつまりなんでもありです。その中で需要があるメジャーなテーマ、重要は少ないけど必要な人が必ずいるテーマ、特定の属性の人以外は見向きもされないようなテーマ、さまざまです。書店はテーマによって本棚がジャンル分けされていて、お客は「この本はこの辺りかな」と見当をつけて探すわけです。ネット上の書店の場合、書店と同じようにジャンルを辿って「この辺りかな」とブラウズをすることもできますし、探している書籍のキーワードを検索することもあるでしょう。意中の書籍がはっきりしている場合は書名タイトルを入れればほぼ一発でたどり着けるでしょう。なので書名や内容紹介のキーワードはとても大事です。SEOと似ていますね。ただちょっと間違っていたり、内容はまさにそうなんだけど検索された言葉がタイトルで使われていなかったりするとなかなか命中しないこともあるでしょう。特定の書籍を探しているときに見つけやすくする、または特定のテーマで探している時に「あなたが探しているのはこういうやつじゃないですか?」と提案してくる、そんな役回りをアマゾン広告にやってもらうことができます。少し差し出がましいSEOみたいな感じです。ニッチなテーマでマスな広告を打てない場合でも、それが必要な時に広告が発動するわけですから広告費が先行して飛んでいくわけではありません。オーガニックなSEOにリスティング広告でサポートする。これがアマゾンでいえば書誌情報の充実とアマゾンadsに対応するといえるでしょう。

広告実行後すぐに迷い危機感を覚える

さてブランクを経てアマゾン広告に向き合いましょう。もちろんガイドはサイト内にもありましてマニュアルテイストのものや、画面も見ながら学べるものもあります。ざざっととにかく書籍は多品種少量生産なので広告対象のASIN(商品)はたくさんありますよ。そして広告を薄く広く張り巡らせて、そこからメリハリをつけていったらいいのではないかとせっせと登録しました。ここはマニュアルなので本当に、せっせと。そして走らせるとやはり効率がいいものと悪いものとが出てきました。効率がいいものを金額上限を上げて、効率の悪いものを削っていきます。いい感じです。しばらく走らせていると、条件が変わらないのにパフォーマンスが上がったり下がったりします。なんですかこれは。ということは最初の出だしで判断してしまったやつ、あれは決断が早すぎたんではないのか。効率がいいから予算を増やした銘柄、これはどこまで増やせるのですか。効率いいASINの予算を増やし悪いのを削った結果、たとえば2割ほど出広金額が上がったけどこれはいいのでしょうか。そもそもどこが「最適」な入札で「最適」な全体予算なのですか。ACOS(Advertising Cost of Sales=広告にかかる費用が総売上に占める割合)は下がっているから大きく間違っているわけではないと思うけど適正値がわかりません先生!という状態になりました。はじめて2週間ぐらいで迷いの数がだんだん増えてきました。

教科書がない、本当に?

そんな折に、タイミングよく、なのかどうなのかわかりませんが広告代理店からのアポイントがありました。まさに今私がおそるおそる立ち向かっているようなことを一定の手数料でまるっとやっちゃいますよ、同業他社の実績もございますよという話でした。熱心なプレゼンとちゃんと弊社の情報をベースに試算もしてあり好印象でした。あとで調べたり聞いたりしましたが評判も悪くない感じです。さてどうする。と思いましたけどその時はあまり迷うまでもなく結論を出しました。私がこんなに入り口でつまづいている状態で人に任せたら、その任せて出ているパフォーマンスがそもそも適正かわからないではないか、ということです。依頼しながら定期MTGなどで教えてもらう、ということもできるでしょうがそんな依存状態で勉強になる気があまりしません。やはり誰がやるにしても基本のフレームみたいなものは自分でわかるようにならないとなあ、と仕方なく(おい)どこかの三連休の日に吉祥寺の丸善ジュンク堂書店で「ネットマーケティング or ネット広告 or 運用入門 or 鉄則のルール」みたいなフワンとした検索用語を頭に書棚を徘徊したのでした。ウェブマーケティング、ネットマーケティング、ECサイト集客の本、それだけ見ると結構タイトルはあるのですが、広告入札のさじ加減とかキーワードをどこまで深掘りすべきかとか競合はどこまで意識すればいいのかとか運用ルールはどこまで遊びを持たせたほうがいいのかとか最適な予算ボリュームかどうか見極める指標などはあるのか、悩みはいつの間にか増えているわけですがそのあたりにページを割いている本が本当になくて。ビジネス書のマーケティング棚も、理工書の技術書も探しましたけどリファレンスみたいな本はありましたけどイメージしている本がないのです。私のイメージは「今からでも遅くない!小さな会社のウェブ広告運用担当者に超プロがこっそり教える広告最適化マニュアル」1,800円みたいな感じだったんですが。本当にないんですよね。

やり方は書いてある。どうしたいかは自分が決める。

まさかそんなわけはと思って結構探したのですが、ぽいのはあっても内容をみると入ってない。実務的な内容、セオリーが欲しいので「ぽい」ではダメなんです。ネチネチ探していると『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法』というかっこいい系のカバーの書籍を見つけました。株式投資みたいなタイトルですし最初はスルーしたのですが、回遊した後に戻ってきて中をぱらぱら見ると目次がひょっとして真っ正面かも、と。目次を見て一番それっぽいところを読んでみるとまさにジャストミートな内容でした。こんな本知らなかった。知らなかったけど5万部とか書いてある。やっぱ実のある本なんだ、ちょっと待てこの著者の名前見たことがある『売上最小化〜』のひとだ、こんな実務の本も書いていたんだ、社長なのに。意外だ。まあいいや、2冊買って帰ろう。と2冊買って帰ったのでした。

ファンダメンタルズマーケティング×テクニカルマーケティング

2冊を買って帰って確認してみると、さらに驚くべき事実に気づきました。まずは「オーディオブックになっている」という点でした。とにかくオーディオブックは乱読できるのが最大のメリットだと思うのですが、このような図版もふんだんに入っている実務的な本は乱読対象としてはいいんですけど吸収率はあまり高くないのです。それこそACOS、ROAS、CVR・・理解する前に言葉が流れていってしまうのです。さらに図版も見ないですし。マインドやロジック自体は言葉として入ってくるとしても指標や計算などの肝心な部分は音声だけで会得するのは無理筋です。でも私としてはどんな人がどんな本を書いているのか、ということ優先で『時間最短化〜』を含めた3冊を一気聞きしました。ここまで地に足がついた、実務から経営まで一本筋が通っている本は正直激レアで、自分の目下の課題解決を忘れて読む楽しさにうっかり持っていかれているところもありました。

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株価絶好調だけどこれから買うか、それとも利確するか

これを書いている今現在、日本の株価は絶好調で、ウハウハしている方も多いかもしれません。もう売り払って利益を確定しちゃおうといううらやましい立場の方もいるでしょう。一方で新しいNISAも申し込んだし、足下の数字もいいのでこれから行くぞーと鼻息が荒い人もいるでしょう。どちらが正しいかは未来がわかっていれば話が早いのですがわかんないですからね。そう、わからないから自分で決めなければいけないのです。限界利益というものがあリます。ネット書店という売上のチャンネルがあります。その中で全体の売上の中のいちセグメントであるネット書店で広告にどこまでかけられるかは、そもそもあらかじめの答えはなく、ポートフォリオ全体のバランスで検討され規定されるべきものなのです。広告比率を一定に保ちそこからはみ出ない形で堅実に一定以上の利益を確保するのも有効な打ち手ですし、もう儲けは出ないけどネット書店でパフォーマンスのよくない商品に効率度外視の広告費をかけて在庫処分をするのもありなのです。立てた目標、そして目的にそってテクニカル指標をうまく使い達成することが大事なのです。

利益を最大化する目標を立てること、ですね

株式投資に戻ると、いやもうこんなに株価上がっちゃってるし今から参入なしでしょ、むしろ利確しといたほうが、なのかいやいや、日本の出遅れ半端ないからむしろ今からっしょっていうのは自分が決めることで、実体経済がどうなんじゃと振り返り、チャートから見えるサインを謙虚に分析する、その判断をブレないようにするのはそもそもの投資ポリシーを持っておくことじゃよ。となるでしょうか。

冒頭の記述でガツンときてから、それから読み進めて株式投資との共通点にニヤニヤするところもありました。原則は大事なんです。ふらつく心を律しないといけないんですよ。そして、私、その辺多分苦手なんですよ。いや多分じゃなくてかなり。

というわけでこのファンダとテクニカルの例えは本当に白眉で、実務的な部分で出てきた「投資相談」的な悩みは知恵袋的なところは聞けるところもあるかもしれないが、このアプローチで自分ごととして解決、というか決めるしかないんだな、と思い至った次第です。代理店を頼むかも含めて、です。厳しい〜ですが説得されてしまったのでもう仕方ないです。まいった。というわけでこれ読んで勉強になったよーって方々と勉強会とかもやりたいです。このブログを見ていただいている方は大体私の正体を知っている方かと思いますのでお声かけくださいませ。いや本当に。

『ファンダメンタルズマーケティング×テクニカルマーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法』
木下 勝寿 (著) 実業之日本社

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