なぜ「中間フォーマットを持つ」という話になるのか
このエントリは、「おまけ」のような位置づけです。懐かしい方には懐かしく読んでいただけると思います。
『僕にはAIの言葉がわかる』その1:出版社はAI用フォーマットを用意しておくべき?
『僕にはAIの言葉がわかる』その2:用意することで一石二鳥になるかも作戦
ここまで書いてきて、
この話は決して新しいものではない、という感覚もあります。
おそらく、電子書籍の立ち上がり期に関わった方であれば、
こんな話、昔もあったような?と思い出すのではないでしょうか。
電子書籍「元年前」にあった状況
電子書籍ファイルのフォーマットは、今ではEPUBが事実上の標準になっていますが、
最初からそうだったわけではありません。
PDF、XMDF、.book、mobiなど、複数のフォーマットが併存し、
どれが主流になるのか、そもそも一本化されるのかも分からない。
制作会社やストアごとに要件が違い、受け入れられたり、られなかったり。
先が見えない時期が確かにありました。自社方針で決めちゃっていいものかもわからない。
その頃、よく言われていたのが、
「特定の最終フォーマットに賭けるのではなく、中間としてXMLで持っておこう」という考え方でした。
当時から専門的な領域にまでは直接踏み込めなかった私は、中間フォーマットという言葉も概念的にしか把握できておりませんでしたので、「つまりは生協とかによくある、各種野菜がカットされて冷凍されている形態。CookDoとがっちゃんこすることで最終フォーマットが完成する」というような理解でおりました。この考えは、
- 表示仕様に引きずられない
- 後から別フォーマットに変換できる
- 判断を先送りできる
という意味で、「組版最終データに戻って全部作り直し」という最悪の事態という将来の不確実性に対する保険として機能していました。
今、AIと出版の関係は「元年前」に近い
今回、AIと出版について整理していて、
強く感じたのは、
今がまさにその「元年前」に近い状態ではないかということです。
- どのAIが標準になるのか分からない
- 学習の可否や対価の仕組みも流動的
- 法制度や業界ルールも変わり続けている
この段階で、
「この形式が正解だ」「この仕様で決まりだ」と
断定するのは現実的ではありません。
一方で、
何も準備しないまま様子を見る、というのも危うい。
電子書籍のときと同じく、
仕様が固まってから動くと、選択肢が一気に狭まる
ということも、過去の経験から分かっています。
今回の「中間フォーマット」はXMLそのものではない
ここでひとつ補足しておくと、
今回話している「中間フォーマット」は、
必ずしも当時のXMLそのものを指しているわけではありません。
今の文脈で言えば、
- Markdown
- シンプルなHTML
- CMSにそのまま載せられる構造化テキスト
こうした、人にも読めて、機械にも扱える形式が、
現代版の「XML的ポジション」に近いと考えています。
重要なのは形式そのものではなく、
- 表示や配信に縛られすぎない
- 意味構造を保っている
- 後から別の用途に変換できる
という性質です。
なぜ今、それを持っておく意味があるのか
AIに関するオファーが来るかどうかは、分かりません。
来るとしても、いつ、どの形かは予測できません。
ただ、
- 構造を保った本文データがあり
- それをCMSや別用途に流せる状態で持っていれば
「できます」「できません」「ここから先は条件次第です」
と、自分たちの言葉で話ができます。
逆に、それがなければ、
相手の提示する条件に対して
「対応可能かどうかを確認します」としか言えない。
その差は、時間が経つほど大きくなるはずです。
まとめとして
この一連の話は、
AIに積極的に学習させるべきだ、という主張ではありません。
また、CMSにコンテンツとしてアップできる形式
WPやnoteが最終解だ、と言いたいわけでもありません。
もっと単純なことです。
不確実な時代において、
判断を先送りできる形で資産を持っておくことは、
出版社にとって何度も役に立ってきた。
電子書籍がそうであったように、
AIと出版の関係も、いずれ「当たり前」の形に落ち着くでしょう。わからんけど、方向づけは定まってくるのではないか。
そのときに主導権を持っているかどうかは、
今、どの状態でコンテンツを持っているかに左右される。
そう考えると、
中間フォーマットを持っておきましょう、という話は、
新しい提案というより、
過去に何度も選んできた現実的な態度の延長なのだと思います。
今はまだ、AIと出版の「元年前」。
だからこそ、決めすぎず、放置もせず、
動ける状態だけは作っておく。
そのくらいが、ちょうどいいのではないでしょうか。
繰り返しが多いですね。くどいんですよ。すいません。
プロフィールでも書いてあるかと思いますが、私の脳内整理に書いているものであって、私が自分の業務でこうしようとか、会社はわかってくれないからぶちまける、とかでも何でもないのでそこは何卒ご承知おきくださいませ。長文読んでいただきありがとうございます。大好きです。



コメント