Amazonへのトラフィック減少は日本でも?出版社はどう対策する?

デジタル書籍・AI・海外版権

最近、お会いする版元の方と「Amazonのトラフィックが減ってない?」という話が、ちらほら話題にのぼるようになりました。売上はもちろん気にしているのですが、アクセスがあってのカートクリックなので、アクセス数もみなさん見ているんですよね。

Googleの検索ロジックが変わったからではないか、AI検索の影響ではないか。いくつかの理由が考えられますが、確かにそうなんじゃないかと思われますが。それを証明するような日本の出版業界に限った明確なデータは、なかなか見つかりません。

私もブログの更新もありますので出版業界のニュースはチェックしています。でも、出版系のニュースをルーチンで追っているだけでは、この話はほとんど入ってきませんでした。

考えてみればそりゃそっかです。

出版業界に特有の話ではなく、Google検索のアルゴリズム、リスティング広告、ECサイトへの集客、アフィリエイト、AIによる検索結果の要約など、ネットEC全体で起きている変化だからです。

そこで、出版ニュースとは別に、検索エンジンやEC、広告、SEOに関する海外の記事や解説をいくつか調べてみました。皆さんご存知かと思いますが念のため先に断っておくと、私はGoogleのアルゴリズムやSEOの専門家ではありません。個別のデータについても、日本の出版市場にそのまま当てはめられるとは限りません。集めた情報も多分そこまで尖っていないし、尖っていたとて理解があやしいです。

ただ、複数のデータや事例を並べてみると、従来Amazonへ読者を送り込んでいた経路が、全体として細くなっている傾向は間違いなくあるように思います。

AmazonがGoogleショッピング広告への出稿を減らした

まず大きな話として出てきたのは、AmazonによるGoogleショッピング広告への出稿削減です。これはあまり意識していなかったところで、意外な感じすらありました。自社商品が広告で出てくると「ありがとうございます」と心のなかでいうぐらいで、ボリュームの感覚はなかったですが。。

海外の解説では、AmazonがGoogleのショッピング広告から撤退、あるいは大幅に出稿を減らした時期に、Amazonへのセッションが約13%減少したというデータが紹介されています。13%という数字については、対象期間や計測方法を含めて慎重に見る必要があります。しかし、AmazonがGoogle広告から大量のユーザーを集めていたこと、その広告を止めればAmazonへの流入も減ること自体は、ごく自然な話です。

Amazonは、私たちから見ると巨大なネット書店であり、放っておいても利用者が集まってくる場所に見えますが、実際には、Amazon自身もGoogleに広告費を払い、Googleで商品を検索した人をAmazonの商品ページへ誘導していました。

出版社から見れば、これまでは自社で広告を出していなくても、AmazonがGoogle広告を出すことで、間接的に自社の商品ページへ集客してくれていたことになります。その導線が弱くなれば、Amazon内の商品ページへのアクセスも当然、減ります。

Amazonが出稿を減らした理由については、広告採算の問題、自社内検索への自信、Googleへのデータ提供を避けたい意図など、さまざまな見方があります。確定的なことは分かりません。また、日本での広告方針がどうなったか、という点についても情報がありません。少なくともAmazonが企業の考え方としてGoogleからの集客を以前ほど重視しなくなっている可能性はありそうです。

書評やアフィリエイトを経由する導線も細くなった

次に、もう一つ大きいのがあります。Google検索のアルゴリズム変更です。

Googleは近年、検索順位を上げるために作られた大量の記事や、他のサイトの情報を要約しただけのコンテンツ、実体験の乏しいレビュー記事への評価を厳しくしています。Googleの公式文書でも、「検索エンジンのためではなく、人のために作られたコンテンツ」を重視する方針が繰り返し示されています。

また、商品レビューについても、他人の意見をまとめただけではなく、実際に使用した経験や独自の検証、一次情報が重要であると説明されています。方向性としては正しいと思います。ごもっとも。

問題は、この変化によって、長年運営されてきた個人のレビューサイトやアフィリエイトサイトまで、大きくアクセスを失っていることです。海外では、空気清浄機などを実際に購入して詳細な検証を行っていたレビューサイト「HouseFresh」が、Googleのアップデート後に検索トラフィックの大半を失った事例も話題になりました。「使ってみた」はこれはこれで1次情報といえると思うんですけどねえ。

すべての個人サイトが低品質だったわけではないはずです。それでも検索結果では、個人運営の専門サイトより、知名度の高い大手メディアや巨大サイトが上位に表示されるケースが増えているとのことです。

出版に代入してみると、

「読者がGoogleで本のテーマを検索する」
「書評ブログやおすすめ記事を読む」
「記事内のリンクからAmazonへ移動する」
「Amazonで本を買う」

という流れが弱くなっていることになります。レビュー数もそうですが、感想や書評が検索結果にたくさん出てくるとそれだけで「いい内容なのだな」って信頼感高まりますよね。

これらの情報の優先順位が低くなると、判断できないな・・また今度みよう(今度は2度と来ない)となるわけですよねえ。

AI Overviewsが検索結果の中で回答してしまう

さらに、GoogleのAI Overviewsがあります。

AI Overviewsは、検索した質問に対する回答を、Googleの検索結果画面上でAIがまとめて表示する機能です。利用者にとっては便利です。複数のサイトを回らなくても、検索結果の画面だけで概要をつかめます。

一方で、情報を掲載しているサイトにとっては、深刻な問題になります。AIの回答を読んで満足すれば、元の記事をクリックする必要がなくなるからです。海外メディアのDigidayでは、AI Overviewsの表示によって、パブリッシャーへの検索経由のトラフィックが10%から25%程度減少したという調査結果が紹介されています。

調査によって数値には差がありますが、「検索された回数が同じでも、Webサイトへのクリックは減る」という傾向は、すでに複数の調査で示されています。この部分に関してはこれまでもブログでご紹介してきました。もっと強烈な数字の下落を報じたものもありましたね。

これが、いわゆる「ゼロクリック」問題といわれてるやつです。

書籍の場合も、たとえば「部下のマネジメント方法」「老後資金はいくら必要か」「生成AIを仕事でどう使うか」と検索した人に対し、Googleが検索画面で回答を完結させれば、直接Amazonを訪問するユーザーはもちろん、そのテーマを扱う出版社の記事や著者の解説ページには来てもらえません。

出版社サイトへの流入が減れば、そこからAmazonへ移動する読者も当然減ることになります。Google検索から情報サイトへ行き、情報サイトからAmazonへ行くという、インターネット上の流通経路全体が短くなっているのです。

商品検索はGoogleではなくAmazonから始まる

一方で、米国では以前から、商品を探す際にGoogleではなくAmazonの検索窓から直接探し始める利用者が多いといわれています。

Amazonはネット書店やECサイトであると同時に、巨大な商品検索エンジンでもあります。これはAmazonにとって、Googleから独立できるという意味では強みです。

しかし、出版社やメーカーにとっては別の問題が発生します。Google経由の流入が減っても、Amazon内で自社商品が見つかれば問題ありません。

ところがAmazon内では、検索順位、レビュー数、販売実績、広告出稿、価格、在庫状況など、Amazon独自のロジックで表示順位が決まります。

Googleから新しい利用者が流れ込まなくなれば、Amazon内ですでに売れている商品や広告を出している商品が、さらに有利になる可能性があります。新刊や知名度の低い著者の本にとっては、偶然発見される機会が減ることになります。いずれにしても流入数全体が減少したらその影響は受けざるをえません。

日本でも同じことが起きているのか

今回調べたこれまでの資料の多くは米国を中心としたものです。

日本のAmazonへの流入が何%減ったのか、日本の出版社の売上にどの程度影響しているのか。そこまで明確なデータは見つけられませんでした。米国の数値をそのまま日本に当てはめることはできません。

ただし、Google検索の基本的な評価システムや、AI Overviews、レビューコンテンツに対する考え方は、日本でも同じように導入されています。

日本でも、以前は検索上位に出ていた個人ブログや小規模サイトが見つかりにくくなり、大手メディア、企業サイト、ショッピングサイトばかりが並ぶ検索結果の傾向は、個人ユーザーとしても見受けられます。例外的にnoteは強いと思いますが、脇にそれるので置いておきます。

さらに、日本の出版業界は、ネット書店におけるAmazonへの依存度が高いと考えられます。オンラインで本を購入してもらうとなると、Amazonの影響は非常に大きい。そのため、Amazon全体の集客方針が変われば、日本の出版社や書籍の販売にも直接影響が出やすい構造、といえると思います。

「米国で起きている特殊な話」として無視するのは難しいと思います。

出版社は「Amazonに集客してもらう」前提を見直す必要がある

ここまでの話をまとめると、以前は次のような流れがありました。

Googleが利用者を集める。
アフィリエイトサイトや書評ブログが本を紹介する。
Amazonが検索トップに来る、またはGoogle広告で商品ページへ誘導する。
出版社はAmazonに書誌情報を登録しておけば、ある程度の流入を期待できる。

もちろん、実際にはもっと複雑です。しかし、出版社自身が直接集客しなくても、Google、ブログ、アフィリエイター、Amazonが読者を運んできてくれる構造がありました。

その構造が、少しずつ機能しなくなっています。

出版社としては、「Amazonの商品ページを作れば販売準備は完了」と考えるのではなく、読者がAmazonを開く前の段階から、書名や著者名を認知してもらう必要があります。

ではどういう対策が考えられるのか、考えてみました。

これから重要になる三つの対策

1.書名や著者名を直接検索してもらう

まず必要なのは、指名検索を増やすことです。

一般的なテーマで検索されるだけでは、AI Overviewsや大手メディアの中に埋もれてしまいます。

一方で、書名、著者名、出版社名が直接検索されれば、GoogleでもAmazonでも、公式情報や商品ページに到達してもらいやすくなります。そのためには、発売時に書籍情報を告知するだけでは十分でない可能性があります。

書籍のテーマに関連した独自調査を行う。著者が専門家としてニュースやメディアに登場する。編集者が企画背景を発信する。SNS上で本の内容が話題になる、などのフックが有用です。

その結果として、「詳しく知りたいから著者名を検索する」「本が出ているなら書名を調べる」という行動を起こしてもらうきっかけになります。

書籍というパッケージそのもののバリューを上げるという根本的な話もありますが、私には荷が重いビッグテーマなのでスルーさせていただきます。

2.出版社サイトを一次情報源にする

Googleは、誰が書いたのか、どのような経験や専門性を持っているのか、なぜその情報を発信しているのかを重視する傾向になっています。

出版社は本を作った当事者です。本来であれば、書籍について最も詳しい一次情報源であるはずです。しかし、出版社の書籍ページを見ると、書名、著者名、定価、ISBN、短い内容紹介だけで終わっているケースも少なくありません。

これからは、著者の経歴、専門性、企画の背景、本文の一部、編集者のコメント、関連資料、著者インタビューなど、出版社だから提供できる情報を充実させる必要があります。一次情報源だということをgoogleに知ってもらうような情報にするといういい方もできるかなと思います。

反対に、かつてSEO目的で作った中身の薄い記事や、他サイトの内容をまとめただけの記事が大量に残っている場合は、整理や統合も必要です。アクセスが少ないという理由だけで機械的に削除するのではなく、読者にとって意味があるか、公式サイトに置くべき情報かという観点で見直すべきでしょう。

ここはAIアシスタントきのこちゃんが教科書的なご指導をしてくれましたが、「もっともである」と思いましたので活かします。

画像も作ってくれたよ。凝縮乙。ちょっと仰々しいんだよねえ。

3.読者と直接つながる

最後は、各社取り組まれているところだと思いますが、検索やAmazonを通さずに読者へ情報を届けられる仕組みを持つことです。

メールマガジン、ニュースレター、SNS、著者コミュニティ、イベント参加者のリストなど、方法はいくつもあります。

TikTokやInstagram、YouTubeなどで、実際に本を読んだ人が感想を発信するUGCも重要です。

検索結果に表示されるのを待つのではなく、SNSやニュースレターで本を知ってもらい、直接詳細画面へ。あるいは読者が書名を覚えた状態でAmazonへ向かう。

Amazonへのリンクを踏んでもらうことよりも、Amazonで商品への直接リンク/書名を入力してもらえる状態を作ることの方が、今後は重要になるのかもしれません。

いや君そんな大袈裟なんだよね、そんなかっこいい仕事じゃないんですよね。

Amazonが弱くなったのではなく、Amazonまでの道が変わった

Amazonへのトラフィックが減っているという話を聞くと、Amazon自体の集客力が落ちたように感じます。しかし今回調べてみて感じたのは、もう少し広い変化です。

AmazonがGoogle広告への出稿を減らした。
Googleがアフィリエイトやレビューサイトへの評価を変えた。
AI Overviewsによって検索結果から外部サイトへ移動する人が減った。
商品検索そのものがGoogleからAmazonやSNSへ分散した。

個別には別々の出来事ですが、すべて「Googleで検索し、複数のサイトを経由し、Amazonで買う」という従来の行動を減らす方向に働いています。Amazonへの道が一本なくなったというより、これまで太かった複数の道が、分散しているのだと思います。

Amazonが重要な販売先であることは、当面変わらないでしょう。ただし、彼らがこれまで通り何もせずとも(何をせずとも、っていっちゃった!)読者を集めてくれることを前提にするのではなく、出版社や著者がAmazonの外で読者を集め、読みたい本を決めた状態で送客する。

その役割分担に変わりつつあるのではないでしょうか。これはSEOの話であり、ECの話であり、AI検索の話でもあります。

そして最終的には、出版社が読者とどのようにつながるかという、出版マーケティングそのものの話なのだと思います。

結論としては非常に平凡です。また、全くやっていない、出版社が取り組んでいないことではないと思います。とがった結論を期待されていらっしゃったら全力でお詫びいたします。

ただ、いいわけをさせてください。実はどうすればいいかの前に、なぜアクセスが減っているのか、自分たちで取り返せるのか、それとももうなす術がないのか、そのあたりの前段の考察があまり明確でなく、「やっぱり Google のアルゴリズムっぽいよ、こればっかりは」という認識のままだと、どこか他人事感があると思いました。それでは、正しく考えはじめられないじゃないですか。

そのため、そのあたりをもう少し深掘りしてみたいと思い、調べてみた次第でございます。おしまい。

参考にした主な資料

1. Amazonのトラフィック急減に関するソース

  • 動画名: Amazon Traffic PLUMMETS 13% What’s Going On? (Amazonのトラフィックが13%急落?何が起きているのか?)
    • 形式: YouTube解説動画
    • 概要: AmazonがGoogle Shopping(ショッピング広告)から撤退したことで、約13%のアクセス急減(セッション減少)が起きた背景をデータとともに解説しています。
  • 記事名: Clicks rose, ROAS fell when Amazon left Google Shopping (AmazonがGoogleショッピングから離脱した際、クリック数は増加したがROASは低下した)
    • リンク: Search Engine Land 該当記事
    • 概要: AmazonのGoogleショッピング広告撤退が、競合する他のEC事業者や検索広告市場全体のクリック数、広告費用対効果(ROAS)に与えた影響に関する分析レポートです。

2. Google AI Overviews(ゼロクリック検索)の影響

  • 記事名: Google AI Overviews linked to 25% drop in publisher referral traffic (GoogleのAI Overviewsがパブリッシャーへの参照トラフィックを25%減少させたデータ)
    • リンク: Digiday 該当記事
    • 概要: Googleの検索結果の最上部に表示されるAI要約機能(AI Overviews)により、記事を配信しているパブリッシャー(Webサイト)へのクリック流入(検索参照トラフィック)が10%〜25%も減少している実態を示す調査データです。

3. アフィリエイトサイトの衰退とE-E-A-Tの影響

  • 記事名: Why are so many affiliate sites losing organic traffic? (なぜこれほど多くのアフィリエイトサイトが検索トラフィックを失っているのか?)
    • リンク: Search Engine Land 該当記事
    • 概要: Googleのアルゴリズム変更により、個人アフィリエイトサイトやレビューサイトが打撃を受けた要因、およびその対策として「指名検索(ブランド検索)」を増やすためのデジタルPRや専門家としての発信がどう役立つかを説いた論説です。
  • 記事名: Why Google’s Helpful Content is Wiping Out Traffic | How to Stay Safe (GoogleのHelpful Content Updateがトラフィックを消し去っている理由と身を守る方法)
    • リンク: Bamboo Nine 該当記事
    • 概要: ユーザーではなく検索エンジン向けに急造された「低品質なリライト・まとめ記事」が、Googleのシステム(通称:Rank-ageddon)でどのような致命打を受けたか、具体的な復活方法とともに解説しています。

4. Google公式:アルゴリズムの評価基準と対策のベース

  • 資料名: Google 検索品質評価ガイドライン (Search Quality Evaluator Guidelines – 日本語版PDF)
    • リンク: Google 検索品質評価ガイドライン公式PDF
    • 概要: Googleが検索結果の評価を外部パートナーに委託する際の、170ページ超にわたる公式判定基準マニュアルです。今回重要視された「E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)」、低品質な「Scaled Content Abuse(自動生成や大量リライト記事などのコンテンツの乱用)」の厳格な審査基準が示されています。
  • ドキュメント名: Creating Helpful, Reliable, People-First Content (有用で信頼できる、ユーザー最優先のコンテンツの作成)
    • リンク: Google Search Central 公式ドキュメント
    • 概要: 出版社が自社サイトをクリーンアップするにあたり、最も準拠すべきGoogle公式ドキュメントです。著者の透明性(バインライン)の明記や、「誰が・どのように・なぜコンテンツを作ったか(Who, How, Why)」を自問自答するための評価リストが掲載されています。
  • ドキュメント名: Google Search’s Reviews System (Google 検索のレビュー システム)
    • リンク: Google Search Central 公式ドキュメント
    • 概要: 商品やサービスを評価するレビューコンテンツに対するGoogleの評価アルゴリズムです。他人の意見を単にコピー・要約しただけではない、「実体験に基づくレビュー(一次情報)」をシステムがどう評価するかが解説されています。

5. 最新のSEO/PPCマーケティング情報

概要: 最新の検索エンジン、AI検索への最適化(LLM最適化)、リスティング広告(PMax広告など)などの海外トレンドを取り扱う世界最大級の検索マーケティング専門メディアです。

メディア名: Search Engine Land (SEO, PPC & AI Search News for Marketers)

リンク: Search Engine Land トップページ

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