『名前のない仕事 ── UUUMで得た全知見』は、UUUM創業メンバー鎌田和樹氏が、自身のキャリアとUUUMの成長過程を振り返った一冊です。
私はUUUMという会社について、「YouTuberのマネジメントやエージェント業を行う会社」という認識は持っていました。しかし、どこかで勝手に「ヒカキンさんが設立した会社なのだろう」と思い込んでいたため、本書を読んでその理解が大きく間違っていたことにまず、あら、そうだったんだ?という感じでした。
タイトルの『名前のない仕事』からは、クリエイティブ業界における新しい働き方や、これまでになかった職種について語られる本なのだろうと想像していました。また、UUUMというベンチャー企業の中で、そうした新しい仕事を作り上げていく物語なのだろうとも考えていました。
ところが、読み始めてまず圧倒されたのは、著者が起業前に在籍していた光通信での壮絶なエピソードです。正直なところ、「名前のない仕事」というテーマ以前に、その時代のストーリーや置かれていた状況のインパクトが強烈で、一気に読まされてしまいました。
ベンチャー企業の創業や成長の物語は、それだけでも十分に面白いものです。しかし本書は、それを超えるほどエピソードの密度が濃く、「成功の再現性」や「心得」「学び」といった観点で読む余裕がなかったともいえるかもしれません。すごすぎて実感湧かないけどここは役に立つ内容だった。みたいな間はなかった。
その後、著者はUUUMを卒業し、新たなステージへ進まれています。本書はそうしたタイミングで出版されたこともあり、一つの区切りとして自身の経験や知見をまとめた一冊なのだろうと思います。
タイトルに関わる部分で特に印象的だったのは、「名前のない」という言葉の意味です。新しいメディアが登場し、そこに人々の注目や影響力が集まっても、当初はそれが仕事になるとは誰も思っていない。あるいは、媒体として認識されていない。その状態から価値を見出し、事業として成立させていく過程こそが、本書の大きなテーマだったように思います。
現在ではYouTuberやインフルエンサーマーケティングは当たり前の存在ですが、当時は広告やPRに携わる人間から見ても、「本当にビジネスになるのだろうか」と疑問視されることが少なくなかったはずです。私自身も、特に「じゃない会社」からのアポイントが多すぎて閉口していた時期がありました。UUUMのせいじゃないんですけどね。
だからこそ、その認識を変え、社会的な信頼を獲得しながら市場を作り上げていった苦労には強く、そうだったろうなあという気持ちにさせられます。華やかなIT業界、YouTube業界の裏側というよりも、人間臭い試行錯誤と苦闘の記録として、印象深く読ませていただきました。
『名前のない仕事 ── UUUМで得た全知見』
鎌田和樹 (著)



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