読書メモ:あの国の本当の思惑を見抜く 地政学

オーディオブック読書メモ

地政学の話に入る前に、まず私自身のことを少し。私は方向感覚が弱く、よく迷います。地図を理解するのも苦手です。「地図がこうだから、こうだ」といった視点で物事を見る力がそもそも弱く、位置関係を捉える感覚にも乏しいのだと思います。

さらに残念なことに記憶力もあまり良くありません。半年前に迷った場所に再び行こうとして、また同じように迷ったりします。単純に方向音痴というだけでなく、感覚に独特の癖があるのではないかとも思っています。すみません、地理にとどきません。

そんな調子なので、都道府県のパズルなどもめっぽう苦手です。テスト勉強で一時的に覚えた記憶はありますが、身に付いたことは一度もありません。けれども、スマホ時代になり、アプリがあれば知らない国でもでも500メートル先の居酒屋でもGPSで場所がすぐわかるようになりました。私の「方向感覚が弱い」という弱点は、もはや弱点ではなくなったと言っても過言ではないように思います。実際、「便利な世の中になった、自分の苦手なことも補ってもらえるのだなぁ」と。

自分の生活範囲や知識の上では便利になったのですが、地政学が扱うマクロの地理に関して(マクロという?)残念ながら現代の地球では、あちこちで紛争や戦争が起こっています。教科書に載っている最新情報である現代史も授業でもそこまで深追いしないので、「戦争=歴史」と思っている節がありますよね。戦後って言葉に象徴されるように、戦争=我が国では終わったもの、みたいな感覚がどうしてもあると思います。

ニュースで「どこの国がどう動いた」「どんな決断をした」「軍事展開を行った」「何人死んだ」といった報道を毎日のように見ていても、それに対する実感や、地理的な感覚に基づいたコメントや解説、ほぼないですよね。ファクト中心で。

解説においても、「地政学的に有利・不利」や「戦略的にどうか」というような視点からのコメントは、あまり見かけないように思います。拠点はどこ、止まりといいますか。どちらかといえば、大統領や首相などのリーダーが示す「戦争の理由」「宣言」に関する解釈ばかりが語られがちです。

「地政学的に有利な場所・不利な場所」「どのような状況で不利になるのか」といった解説が、歴史的な振り返りを交えて非常に細かく示されており、地理というものが単なる位置情報ではなく、国同士の関係においても極めて重要な要素であることがよく分かりました。囲碁将棋のようにフラットで均一な条件ではない訳ですね、さらに2カ国だけでもない。

これまで私はそうした感覚をまったく持たずに、ただ文字通りニュースを「聞いているだけ」だったのです。本書の解説は非常に学術的なベースに基づいており、割と最近の出来事までもその文脈で解釈するように書かれていて、とても説得力があります。著者の方がどんな方なのか、YouTubeなどで活躍されているようですが、詳しくは知りません。ただ、非常に分かりやすい解説でした。

図版も豊富に掲載されています。しかし私はそれをすっ飛ばしてPDFでも見ずオーディオのみで。たまにGoogleマップを開いて「あれ、どういうことだったっけ?」と振り返る程度でした。それでも、「国が大きい」「大統領が強気」「これまでに因縁がある」といった要素だけでは語れない、もっと大きな視点があるということ、つまり「地政学」というフィルターの存在を、少し感じることができました。

これから起きるニュースや、歴史的な出来事の解釈にも、新しい視点で向き合えるかもしれません。そして思ったのです。「やっぱり高校の地理の授業で、地政学的なアプローチも取り入れた方がいいのではないか」と。今の時代、「リスキリング」や「学び直し」という言葉がよく聞かれますが、まさかこんな基本的なことを、こんなに新鮮に学べるとは。幸せなのか、何なのか、自分でもよくわかりません。

ですが、非常に面白く読んだ一冊でした。オーディブル版で読みました。

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あの国の本当の思惑を見抜く 地政学
社會部部長 (著) サンマーク出版

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