読書メモ:すぐ役に立つものはすぐ役に立たなくなる

オーディオブックについて

荒俣さんの本には、学生の頃に触れていましたね。当時読んでいたのは、どちらかというと図鑑や図録のようなものが多かったように思います。パルコ出版のシリーズをコツコツ集めていたら絶版になってしまい悲しんだ記憶があります。小説は読んだことがないのですが、読み物はどうだったかなあ、まあ過去はともかくとして今回の本は面白そうだと手に取りました。

荒俣さんといえば、水木しげる先生の漫画エッセイ?にもたまに登場し、水木家に遊びに来ては、ぼたもちかおはぎか何かをたくさん食べていたというエピソードがとても印象的です。これも本人談ではなく知ったエピソードですが、平凡社に寝泊まりしていたとか、私物の本を大量にストックしていたとか、そんな突き抜けたエピソードを持つ「奇人」でありながら、作家でもあり、ときにはテレビにも出てくる、そんな不思議な存在感のある方です。

意外にも、もともとはマルハニチロ(当時の日魯漁業)のエンジニアという経歴。サラリーマンをしていた時期もあるそうです。しかも10年間。でもそのサラリーマンとして仕事をしていた時間が「いつわり」「金だけのため」だったというわけでもないみたいで。昼休みや仕事終わりの時間を使って、調べ物や執筆をしていたということなので、現在で言う「副業」や「ワークライフバランス」の考え方を先取りするような、「自分のやりたいことをやる、自分の時間を自分で使う」という強い意志に基づいた生き方だったのだと思います。ワークワークバランスになるのかな?今ちょっと旬な言葉になっちゃっていますけどね。

サラリーマン時代に培ったそのエンジニア的な発想や、データベースの仕組みや原理の理解が、その後の著作や博物学的なまとめにも活かされたとも語られています。池上さんの書籍にもそのような件がありましたね。無駄なものは結果一つもないからやってみたらいい、なぜならという、ある意味「答え合わせ」が、本書の中でも繰り返しなされています。

こうしたキャリアや歩みが、飾らず自然体で語られながらも、流されることなく、ときには流されながらも充実した時間を過ごすための「コツ」のようなものが散りばめられています。ただし、それは決して簡単に真似できるようなコツではないのもありますが。繰り返しや、おや?どっちだ?というところもありますが“厳密すぎないおおらかさ”も含めて、本書の魅力であり、読みどころなのではないかと思います。

最近、荒俣さんが長年保管してきた蔵書を、二束三文で売ってしまったというニュースを目にしました。正直、もったいないなと思いながらも、ご本人はひょうひょうとしているのか、あるいはどうなのか……。そのあたりも、これからまたどこかで語られるのでしょうか。

いずれにしても、本書では“荒俣節”を存分に堪能することができ、私としては大満足です。たまにはテレビにも、ふらっと登場してほしいですね。たまには出ているのかな? いずれにせよ、またお姿を拝見したいものです。
本書はオーディブル版で聞きました。

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『すぐ役に立つものは すぐ役に立たなくなる』
荒俣宏 (著) プレジデント社

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