このようなタイトルの本は、今まさに大型書店の、理工書棚の前に行くとたくさん並んでいるジャンルですよね。実際、タイトルとしても「生成AI」「ChatGPT」「GEMINI」といった言葉が入ってくると、それだけで“パソコン書”のような扱いになってしまうのも、まあしょうがないところです。
思い返せば、かつてパソコン関連書籍が大量に出始めた頃も、ウィンドウズの操作なのか、ソフトの使い方なのか、そもそも何ができるのか——いろんなレイヤーの必要なことがごちゃごちゃに戦い合って、場所の取り合いをしていたような、あの感じに似ているものがあります。「パソコン」と「ビジネス」が別々のものという感覚がありましたが、今ではデスクワークの業務はパソコンとほぼイコールで、仕事はパソコンでやるもの、という認識が当たり前になっています。
多くのアプリケーションは実務に直結するものが多いですから、私は「ビジネス書がパソコン書を吸収した」と感じています。 少なくとも地続きだとは思っています。
そして今では、プログラミングにせよプロンプトにせよ、もう一歩進んだ内容が語られることが多くなっています。実務に即して、どう効率を上げていくかという考えのもとに書かれた本が増えてきていると感じています。
本書に関しても、私はそういう頭でポチっと購入したわけですが、いい意味で期待を裏切られました。生成AIの成り立ちや基本的な仕組みについて、とても丁寧に書かれていたのです。これって、実はすごく大事なことだと思うんです。そこをスキップしていきなりプロンプトエンジニア的な話に行っても、絶対に土台が揺らいでしまうと思います。
では、なぜこの本はそんな構成になっていたのか? 途中で気づいたのですが、この本、実はそこまで新しいものではないんですね。2年前に書かれた本なんです。だからこそ、当時はまだ生成AIを前提としたスキルの活用以前に、「AIとは何か?」という基礎の部分が重要視されていたのでしょう。
逆に言えば、今のように「とにかくどう使うか」という実務直結で学ばなければならない、とマニュアル的に読むよりも、こういった基礎や立ち位置をしっかり理解しておくことのほうが、ずっと大切なのではないかと思うんです。そういう意味では、ボリュームもなかなかにある一冊ではありましたが、とてもよい読書体験でした。
なので、「古いから使えない」といった評価ではなく、「基本を知るための良書」として、非常に価値のある本だと思います。長くなりましたが、そう感じました。
本書はオーディブル版で読みました
『生成AI時代の「超」仕事術大全』
保科 学世 (著), アクセンチュアAIセンター (著)


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