メタ認知とかメタ思考って、そんなに複雑な考え方ではないと思うんです。でも、それを業務マニュアルのように誰でも同じように実行できるかというと、そう簡単にはいかないところがあるなと感じます。
さらに、「自分はちゃんとできているのか?」を他人にチェックしてもらうというのも、なかなか難しい。そもそも、自分で自分の思考を振り返るきっかけ自体が、はっきりとはつかめないという人も多いかもしれません。
そういう意味で言うと、メタ思考はコンサルタントが使うような「フレームワーク」的な道具とは、ちょっと違う性質があると思います。思考のレイヤーの「高さ」や「深さ」も、その時の目的によって変わってくる。そのあたりを自分でコントロールして、適切にアジャストできるようになると、きっと気持ちがいいんだろうなと思います。
たとえば、Google Earthで自分の視点の高さをビシッと固定して、全体を俯瞰できるようにする。さらに、その中にいる自分自身を、まるで背後霊のように客観視できる技術があったら……それはちょっとかっこいいな、なんて思ったりもします。
本書『すごいメタ思考』の特徴として、齋藤孝先生らしいなと思ったのは、単なる「思考の説明」や「やり方・心がけ」にとどまらず、それをどうやって実践に結びつけるかという部分にかなり重点が置かれているところです。
それを伴わない“考えるだけ”のメタ思考を、「メタ思考」とは呼ばないという、かなりはっきりとした姿勢を取っている。エセ・メタ思考であるときっぱりと断絶を打ち出していて、清々しさすら感じました。
斎藤先生が実践者としてのメタ思考を体現しているなと感じるのは、書籍でもちょこちょこ出てきましたが『全力!脱力タイムズ』での姿です。とぼけた論客やコメンテーターとしてのコメントを、おそらく「この発言がどういう役割になるんだろう」という戸惑いはありつつ演じ切る。そのやり取りを見ていると、これこそメタ思考なり、と腑に落ちる場面が思えばあります。
どうせならエセ・メタ思考じゃなくて「ダメ思考」でも良かったんじゃないかと思いますが、コンプライアンス的には問題ありません。このテーマの本は、たまにでも頭の中に補充しておくといいなと、あらためて思いました。
本書はAudible版で聴きました。
『すごいメタ思考』 齋藤孝 (著) かんき出版


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