腸が第二の脳であるみたいな話はたまに耳にするものです。そういうタイトルの本もあったように記憶しています。腸も、脳も理科の教科書のイラストで見る限りは細長い管がぎゅっとなったように見えますから、形状としては似てるといえなくもないのかもしれませんが、とはいえ、考えるたり記憶する脳と、消化器官である腸が似てるというのは比喩的なことなんだろうと勝手に推測していました。
本書を読むと、どちらかと言えば、人間の中心は腸にあって、脳も含めて腸の指揮下にあるように思えてきます。そういう発想は全くありませんでしたが、でも視点を変えてみるとあり得るのか、と。人間は食べたものでできているわけで、それを仕分けし、吸収する腸が体全体の司令塔となってバランスをとっていると考えると、全く不自然なことではありません。そんな調整や指令を脳みその仕事にしてしまうと、もう余計なことを考える暇なんてなくなってしまうんじゃないかというくらい緻密で大事な機能だと思います。また脳みそは残念ながらよく間違えてしまうので、こんな大事なことを任せるわけにはいきません。俄然、腸への感謝が生まれてくる1冊です。
アカデミックな実験の部分なので、笑ったりツッコミするものではないのですが、「このような特徴のあるマウスの腸内環境を別のマウスに移してみたらどうなった」みたいな実験が数多く紹介されています。それによって画期的な発見につながってきたのはわかるのですが、なかなか凄いことをやるなと思ってしまいます。理想的な腸内環境セットみたいなものをお尻から入れたりはできないものなのかなと思えるくらい、腸の中が生命体にとって大事なものだと教えてくれる1冊です。腸面白かったです。
『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』
坪井 貴司 (著) 講談社ブルーバックス


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