私のハラリさん履歴。『サピエンス全史』をオーディオブックで聴き、達成感にひたる。その後『ホモ・デウス』では途中で挫折してしまい、『21 Lessons』は楽しく読み終えました。なんとか振り落とされずしがみついてはいるものの、「ちゃんと読めてはいないな」と感じています。
それでも、毎回タイトルと内容紹介が非常にそそられるので、今回も予約が始まってすぐにポチっとな。店頭で見る紙の本も存在感がありますね、上下巻に分かれており、なかなかのボリュームです。紙版の発売から3ヶ月も経たないうちにオーディオブック版が発売されたのはとても嬉しいことです。河出書房さん、ありがとうございます。
2冊で22時間超という、なかなかの長さではありますが、1週間で聴き終えました。もう少し聴きたいから散歩をのばそうとか、すきま時間にちょっとだけ流すなど、普段より聴いている時間が長かったと思います。途中で途切れるのがもったいなくて、一気に聴きたいぐらいでした。
さて、このような大作の読書メモというのは、どう書いたらいいのか難しいですね。このメモをつけている目的は、読了したという記録と、その時なぜ手に取り、今の自分にとってどのように受け止めるものであったか、であり、どのような意味があったかを残すことです。もちろん「共感する人が多そうだ、皆さんにもぜひ読んでほしい」と思うときは、そう書くこともありますが、基本的には自分にとってどうだったかという、個人的な記録です。読んでくださっている方はお気づきかと思いますが、書籍の内容についてはあまり触れていないことが多いです。
本書の内容は「人間と情報の歴史」について、古代のヒエログリフなどから現代のAIまでを扱った一冊であり、壮大かつ「今と将来へのメッセージ」も書かれています。正直、読み終えた今は呆然としています。あまりに大きい。
さらにグローバルなベストセラーなので、書評も含めて膨大な感想やまとめ、論考などがありすので、劣化コピーのような内容を綴るのはあまり意味がない。感想を書くために簡単にまとめると、上巻では、古代から人間同士が「共同主観的現実」を共有するために使ってきた「物語」という概念の発見とその恐ろしい力について描かれます。それは口伝から文字になり、印刷可能になり、そして編集可能になった。その「自己修正メカニズム」についても説明されます。
下巻では、AIによる情報処理によって、文章を生成するだけでなく、意思決定まで行えるようになるという内容に踏み込みます。AIという存在が政治構造や政治的な決定にまで影響を及ぼすことの危険性についても警鐘を鳴らしています。
シンプルにまとめすぎると、かえって何も伝わらない気もしますが、「情報」という軸で人類の歴史をまとめ上げるというこの大きな仕事、そしておそらく本書の企画が始まった頃には、現在のように生成AIが発展し、台頭していなかったであろうことを思うと、下巻のAIに関する記述は当初の想定外だったでしょう。それにもかかわらず、著者はAIが物事を決定することの危険性について、AIの性質や人々が判断し信頼する構造を踏まえたうえで予見しています。
それは、私たちがイメージしがちなSF的「AI政府」ができるということではなく、政治家がAIにべったりと頼り切り判断を丸投げするということでもない。意志を持たないAIが状況を自ら判断し、SNSなどで人と見分けがつかない形で発信を続けることで、人々の感情を結果的にコントロールする可能性について述べています。そして、人間がいかに「ころっと」信じ込んでしまうのか。そのメカニズムについては、上巻から周到に解説されており、恐ろしいほど説得力があります。ぞっとします。
加えて書いておきたいのは、やはりこれだけ分厚くボリュームのある本を紙で読むのは、今の私にはハードルが高いということです。目の集中力が途切れてしまいます。オーディオブックでなければ読破できなかった本でした。
さらにありがたかったのは、これは翻訳の力もあると思うのですが、耳で聞いても言葉がスッと入ってくるという点です。専門用語や難しい言い回しが少なく、頭に入りやすい。それでも、これだけ長い内容なので、今どのあたりを聴いているのか、全体の展開がつかみにくい部分はありますが、「まず読み通せる」というのが大前提なので、それがありがたいのです。
最後に。このような大作をチームで制作し、世界中で読まれ評価されているというのは本当に素晴らしいことだと思いました。一人で何もかも調べて書いていたら、何年かかるかわかりません。チームで動くということは、それだけコストもリスクもかかるわけで、こうしたプロジェクトがビジネス的にも成功するというのは、私には直接関係ありませんが、なんだか救われるような気がしました。
(本書はaudible版オーディオブックで読みました)

『NEXUS 情報の人類史 上: 人間のネットワーク 』
ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田 裕之 (翻訳)
コメント