著者の山本健人さんは、現役の外科医としての経験をもとに、人体の仕組みや病気のメカニズム、医療の歴史や最前線をわかりやすく、そしてユーモアを交えて伝えてくれます。
NHKスペシャルで放送されている「人体」というシリーズですが、私は気がついたときにはみちゃいます。人体の仕組みを最新の研究に基づいて追求し、複雑な機能や目的をビジュアルで見せてくれる番組です。それを見るだけでワクワクしますが、本書もまさにそのような本でした。
本書もまたタイトルの通り、「すばらしい」人体の奇跡的な仕組みについて語られています。そして、こんな素晴らしい人体を大事にしなくてはいけないよなぁ(でも)と、ため息をつくほどの説得力ある知的冒険が展開されていきます。
amazonの商品紹介にも挙げられていますが、肛門の機能のすごさには思わずうなりました。いきなりこの部分を紹介するのもどうかと思いつつ、これはただの門ではありません。開閉機能だけでなく、気体・液体・固体を識別するという精密な働きをしています。いわれてみれば確かに、きちんと分別して悲惨な事故にならないように働いているのです。しかも、頭のほうが特段の指示を出すことなく、プロの仕事をしてくれている。なんと素晴らしいことでしょう。考えてみれば、こうした知識は学校の保健体育でも教えられませんでしたし、いわゆる健康本でも扱われてこなかった領域だと思います。それだけに、新鮮な驚きがありました。
別の章では、人体の機能に関する大発見や、ウイルスのような外からの影響、そして病気に対する画期的な治療法の発見などが描かれています。歴史の教科書では年代と人物名で1行の知識として覚えるような内容が、本書ではストーリーとして紹介され、人体と同様に「奇跡が起こった」としか思えないような幸運な流れがあったことが学べます。
また、健康の常識に対する新たな見解や、現代医療の課題についても、健康ノウハウ本では語られないようなアプローチで解説されており、非常に引き込まれる内容でした。私も健康本はサプリのようなもので、すぐに忘れてしまうので、定期的に手に取るようにしています。本書はそれらとは別枠の「教養書」として、これからも出し続けてほしいなぁと思いました。
(本書はaudiobook.jp版で聴きました)

『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』
山本健人 著(ダイヤモンド社)
コメント