「エフェクチュエーション」という言葉ははじめて聞きました。この「鳥ちゃん」のイラストは見かけたことがあったのですが、この言葉自体が何系なのかもわからず、MBA的なやつかなと思いながらスルーしていました。「エフェクト」と関係ありそうなので効果のあるマーケティング系?とも考えたし、しかし造語なんだろうな…などと思い流れていきました。。
ときに私はこのブログを音声認識で書いています。「エフェクチュエーション」は何度かいっているのですが、まだ正確に聞き取ってもらえていないようです。私の滑舌が試されるタイトルでもあります。
「エフェクチュエーション」は、下記の5つの原則を解説したもので、特に起業家がどのように意思決定を行うべきかを体系的に解説しているものです。フレームワークというよりは考え方、判断基準に近いものといえそうです。
「手中の鳥」の原則
「許容可能な損失」の原則
「レモネード」の原則
「クレイジーキルト」の原則
「飛行機のパイロット」の原則
フレームワークと矛盾するものかはわかりませんが、私の感想としては、フレームワークにはまらないようなスタートアップ特有のスピード感、あるいは外的状況、市場の環境が劇変する中で、予想できない出来事にどう判断し対応していくか、セオリーが効かないときにこそ必要な原則(行動規範)になるもののように思いました。
たとえば、一番よく出てくる「手中の鳥の原則」というのは、「今、手の中にあるもので始める」という発想です。未来のチャンスや理想の条件を待つのではなく、今すでに自分が持っているもの――知識、経験、人脈、時間など――を出発点にして動き出そうという考え方です。
たとえば、何か事業を始めたいと考えている人がいるとします。「資金がない」「経験が足りない」といった理由で、なかなか踏み出せない。そういうときに、この原則は「いま自分にできることは何か?」に目を向けるよう促します。
今はわかりませんが、昔のRPGでも最初はお金もなく、不本意な装備の中で工夫して、死にそうになりながら、時には死にながら、とにかくコツコツ始めるしかなかった。その後、いろいろな情報や仲間、アイテムを「手中の鳥」として育てながら成長していくわけですね。これだって、どのような順番で手に入るかはわからないし、イメージ通りのものかもわからない。部品ごとに「今手に入ったのはこれだな」と確かめて、次にどうするかを考えるわけです。
ひとつひとつの原則はそこまで複雑でも難解でもなく、むしろ明解なんですが、それらを現実の現場で自分のケースに対応させていくとなると、それは高度なことだと思います。でも、ものすごい複雑でしかも変化が速い世の中で、その把握と判断が大切なことだけは理解できます。理解はできるけど、実際できる気はまったくしません。これは難しいことだぞ。
本書の後半では、サイボウズの中村龍太さんによる、エフェクチュエーションの原則を使った実際のケースストーリーが紹介されます。まさに本書のために書き下ろしたと思うほど、原則に基づいてビジネスが展開していく様子が描かれています。このパートがなかったら、私の理解は半分で終わっていたのではないかと思うほど、原則が腑に落ちました。
さすらいつつも、流されるわけではなく雪だるまのように転がりながら大きくなっていく感じ。
最後に、これは本書への不満ではないのですがひとつだけいわせてください。とにかく「エフェクチュエーション」は発音的にいいにくくて、かつぴたっと日本語になりにくい。同じようなニュアンスで「ブリコラージュ」という言葉もありますが、これも日本語とのペアリングやローカライズがうまくいかなかった気がします。どちらも、「あるものではじめる」「予測できない未来に自らの行動で対応していく」という意味では重なるところもあるのですが、「エフェクチュエーション」はそれらを計画的に組み立てた、起業家の意思決定を解析し支援する理論。いってみれば「ブリコラージュ的な発想に、意思決定のルールを加えたもの」って感じでいいのかな。言葉が広がらない理由で考えが広がらないのはとってももったいない。
「手持ちリソース起点の実践思考」
「マイバッグ主義」
「わらしべスタイル」
「ババがあっても降りないイズム」
いや、エフェクチュエーションでいいです。生意気なことをいってしまい、すいませんでした。

『エフェクチュエーション優れた起業家が実践する「5つの原則」』
吉田 満梨 (著), 中村 龍太 (著) ダイヤモンド社
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