私の中で「社会見学本」というジャンルがあって、本書もそのような理由で手に取りました。以前、ディズニーキャストの裏話や、うろうろ日記的な本を続けて読んでいて、痛快で面白かった記憶があります。知らない世界を見るのは面白いですよね。
この本は、ベテランのお医者さんが書かれているのですが。長い大学病院勤めから開業医になったという2つの立場から、医療という産業やビジネス、そしてその仕事について綴っているものです。タイトルにもありますが、患者や病気・怪我とどう向き合い、どう対処しているのかが、かなり率直に書かれています。
「主治医をどうやって見つけたらいいか」という、私たちにとっては切羽詰まってはないけど結構気になる課題ってありますよね。緊急のときや定期的に通う場合は近い方が当然ありがたいけど、近いってだけで決めていいのかな、みたいな不安。そんなとき、レストランを食べログのスコアで選ぶみたいに、Googleの口コミで病院を決めていいの?っていう問いかけから始まるのが面白いです。
また、これも業界の中に入っていなければわからないことなんでしょうけど、お医者さんの専門ってどうやって決まるのか、どう名乗るのか、そして外科や内科、脳神経外科などなどの各専門医の特徴も教えてもらえます。
私はもともと大きな病院に患者として行ったことがなくて、お見舞いくらいなんです。病院のたたずまいは知っていても、そもそものシステムはよくわかっていないんですね。健康診断も、健康診断専門のクリニックに行くようになっていますしねえ、病院そのものに触れることがなくなってしまいましたね。
もっとも、これまでたまたまなかっただけで、これから先お世話になる可能性は大いにあるんですが、だからこそ、新鮮で面白かったネタや「お医者さんの本音」「病院の常識・しきたり」を「自分が患者になったとき」の心構えとしていただいておきましょう、と思いました。
医療そのもの以外でも、待合室の機能と役割、予約システムの話、1人の診療にどれくらいの時間を使っているのかなど、リアルすぎてちょっとドキドキする話もありました。本の中の話でも人を待たせる、という設定の話は汗かきますね。また「心配ない、大丈夫です」診察を受ける必要がないことを伝えることも、これからオンライン診療が増えてきたりでますます大事になるかもしれませんね。
…なんだかよもやま話になってしまいましたが、よもやまに面白かったです。「さあ、病院に行こう!」みたいなモチベーションではないけれども、いった時は答え合わせしたいですね。そんな余裕はないか。。

『患者の前で医者が考えていること』
松永 正訓 (著) 三笠書房
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