会社四季報って、存在感やはりすごいですよね。他に類を見ない存在ですし、編集方針がしっかり定まっていて、一貫したデータベースとしての魅力がある。…なんて偉そうにいっていますが、実は私、これまでちゃんと読んだことはありませんでした。
証券会社のサイトに掲載されている四季報情報を軽くブラウズして終わり、というのが正直なところです。本書で紹介されている「四季報の使い方」からは、まったく遠い位置にいました。
以前読んだ『瞬考』という本でも、「四季報を10年分読み込んで、コンサルとしての強みを築いた」という話が印象に残っています。定点観測としての四季報活用、やっぱり効くんだなと思いました。
著者のエミン・ユルマズ氏は野村證券出身のプロフェッショナル。しかし、そんな彼でも「まわりに四季報をしっかり読んでいる人は少なかった」と語っています。基礎的な知識があるからこそ、四季報の良さや使い方がよくわかる。数字の羅列や業績コメントだけを頼りに素人が銘柄を選ぶのは、やはり難しいと感じます。
そんな中で、本書は「四季報のどこを見て、どう判断して、どう活かすか」を、理由とともに丁寧に解説してくれます。さらに、著者が実際に注目した銘柄や、購入を決断したときの心の動きまで描かれているのが興味深い。「数字は自分の投資対象とは違うけれども、それでもここを買った理由」など、客観的なデータと主観的な判断がリアルに交差する場面は、本書の真骨頂だと思います。
私のように、気分で買って一喜一憂する、いわば「素人投資家の鏡」みたいな人間には、もう読んでいて胸が痛いというか、やるせないというか…。でも、格言としてインプットしておけばどこかで戒めとして働いてくれるかもしれません。
今の投資本の主流は、積立型の投資信託でしょう。厚切りジェイソンの本もベストセラーになっていました。確かに、初心者にとってもっとも安全で合理的なのはインデックスの積立投資なのだと思います。
でも、個別銘柄を目利きして勝負する投資ができたら…その喜びや得られる果実の大きさには、やはり惹かれるものがあります。もう年齢的に、リスクの高い投資はあまりしませんが、それでも「かけたい」と思えるような銘柄に出会えることを夢見てしまう自分がいます。
…まあ、私が血の気が多いのは自覚しています。こういう本を読むとテンションが上がってしまって怖いのですが、できれば学習参考書として冷静に読み解き、身につけていけたらいいなと思っています。

エミン流「会社四季報」最強の読み方
エミン・ユルマズ (著) 東洋経済新法社
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