芸能界という世界は、私たちがテレビや舞台で見る華やかな姿とは裏腹に、法制度や労働環境の整備が極めて遅れてきた業界だったことが、実例を列挙ででてきます。それはたとえば更衣室がないというような話から、命に関わることまでです。
契約がない、報酬が払われない、突然のキャンセルがまかり通る。そんな理不尽があっても、「言えるわけないじゃないですか」という空気に支配され、泣き寝入りが当たり前とされていた――制度上他のフリーランスとは違うわけではないですが、この空気が曲者です。発注・受注両面で、です。 少し前になりますが、某プロダクションで「闇営業」というゴタゴタが騒がれたときに、実はマネジメント契約をしていなかったみたいな話が後から出てきましたよね。この時代にまじかという驚きと、あぁやっぱそんな感じなんだなぁという両方の感想が自分の中でも同時に出てきました。このあたりが象徴的 な部分ではないでしょうか。
もちろん、夢を追う世界である以上、努力や苦労の物語が語られるのは自然なことですし、それに励まされる人もたくさんいると思います。
でも、その「夢を叶えるためには我慢が必要」という物語が、“過酷な環境でも声を上げずに耐えるべきだ”という無言のメッセージとして刷り込まれてしまっているとしたら、それはとても危険なことだと思いました。実際に、いまでも有名タレントが「最近までバイトしていました」「売れてないときは何でもやるのが当然」と語るシーンをテレビで見かけます。本人にとっては笑い話や武勇伝かもしれませんが、それが“正しい、当たり前の道筋”としてみてしまうことはちょっとこわいですね。
そんな中で、森崎めぐみさんの取り組みは本当に尊いものだと感じました。
俳優として現場を知る立場でありながら、当事者の声を拾い、制度の隙間に風穴を開け、労災の特別加入や契約ガイドラインの整備など、まさにゼロから道を切り開いてきた。その努力と持続力には、綴られている以上にタフなプロセスだったであろうと想像します。。
制度の整備が進んできたとはいえ、「夢を叶えるには何でも我慢」がまだまだ根深く残っているのが現状でしょう。セーフティーネットがあることは大きな前進ですが、「それが当たり前の空気」は強敵ですよね。
最近のフリーランス新法などが、どのような 意図と流れから作られていったのか、みたいな視点もこのようなプロセスを知ることによって、 リアルに理解できるところもあると思います。そのようなところも勉強になる1冊でした。
文体や長さの微調整、ブログ掲載用のタイトルや導入文など、必要でしたら続けてお手伝いします!

『芸能界を変える──たった一人から始まった働き方改革』
森崎 めぐみ (著) 岩波書店
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