読書メモ:「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない (ディスカヴァー携書)

オーディオブック読書メモ

文芸評論家として活躍されている三宅香帆さんの著作が、またベストセラーとなりました。書評のプロとして「好き」を言語化する技術は、まさに著者自身のノウハウ公開ともいえる一冊です。勢いのある時期にこのテーマで出すのはかっこいい。

実は本書を「もう読んだ気」になっていて、知ったかぶりをしてコメント書いたりしていたのですが、履歴を見たら買ってもいなければ読んでもいなかった。これはマズい(失礼なのと、私の頭がマズい)と、すぐにぽちりしました。

「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい』しか出てこない」というサブタイトルを最初は単なる添え物かと思っていました。書評や本の感想をどう書くかのテクニック本だと思っていたのです。本も含めた広義の推しのことだと。しかし前書きを読んだ段階で、この本はガチで文字通りに「推しの素晴らしさを言語化する技術」にフォーカスしていると気づかされました。

著者の三宅さんは「書評家」である前から「オタク」であり、「推し活をする者」だと宣言しています。その活動マインドについて語る部分がとても印象的でした。私自身、「推し」「ファン」「ひいき」「タニマチ」などの言葉の違いがいまひとつ分からず、使い分けができずにもやもやしていたのですが、そこまではっきりとした境界線はないそうです。これは収穫。

好きなものを「とにかく全部集める」コレクター活動が全てではなく、「好き」と宣言してそれを共有し、広げていくことも推し活であるという考え方も新鮮でした。好きだから語る、そして共感してくれる人を増やす。それも立派な活動であり、そのマインドが理解できないと、「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい』しか出てこない」悔しさは理解しにくいところがありますよね。もしそのマインドがなければ、「自分が楽しければいいじゃない」と思ってしまう。でも、この気持ちを知れたことは、理解がリアルな感じになってきました。そして、推し活に真剣に向き合っている人の真面目さひたむきさにうなりました。もう、「道」だ。

「推しマインド」を見事に言語化している点が、私には何よりありがたかったです。また、言語化のノウハウ自体――本書のメインテーマである「言語化の技術」や「ノイズのフィルタリング」の部分は、どれも納得感があり、さすが本業の力だと感じました。

とはいえ、これは「言語化する技術」というノウハウ自体に興味がある人に多く読まれているのだろう、だからこそこれだけのベストセラーになったのだろうと思っていました。ところが、レビュー(※私も本を読んでから見ました)を見ると、本当に「推しの言語化」に悩んでいる人たちからの感謝の声が多く寄せられていて驚きました。これほど多くの人が言語化に悩み、必要としているのかと。言語化本で一番のマーケットはここであることを納得。

『「好き」を言語化する技術』 
三宅香帆 著 ディスカヴァー携書

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