読書メモ:発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術

オーディオブック読書メモ

ちょっとご縁、ではないな、きっかけがあってオーディオブックをぽちっとしたのですよ。私が働いている会社で出している本なんですけどね。本書は自身が発達障害を持つ著者が、自身の弱点や苦手なことを認識し、それを工夫して乗り越え、ナレーターと声優として活躍し続ける道のりとそれを成し得たノウハウについて書かれた本です。カテゴリとすればノウハウ本に入るのかと思いますが、大変心打たれました。

とにかくですね、小さい頃から、みんなができることができない、忘れ物がひどい、あるいは過集中で特定のことに埋没するなどで怒られたり、居心地が悪かったとのエピソードが連発されます。それらと向き合い、どうすればできるようになるか、そして人に迷惑をかけないかと勉強したり試行錯誤を重ねていったノウハウが惜しみなく大量に投下されています。『認知症世界の歩き方』という本がありましたが、まさに本人による歩き方の指南書であり応援の本です。

本書の目次を読んでいただきたいのですが、100のtipsが紹介されています。

1 持ち物はすべてリスト化する
2 カバン1つにすべて集約
6 どんなに細かいことでもやるべきことをすべて書き出す
31 5分でいいからやる

この辺は、いわゆる仕事のコツ本で紹介されているようなものですよね。
ではここからはどうでしょう。

11 隙間仕事はするな!
14 成功者の真似は危険です
33 普通の人の普通を目指さない
37 発達障害のマニアックさが実は仕事の役に立つ
39 タイマー術で過集中を逆に活かそう
54 なるべく早く自分の弱みを見せる
86 「走ったら間に合う」は危険思想
91 相手はただの紙ヤスリです
98 清濁併せ呑めなくてもいい
100 他人の評価で生きない

こういうことかな?と推測できそうなものもありますが、仕事術の本とは逆なことだったり、これはどういうことをいっているのか見当がつかないものもありますね。発達障害・グレーゾーンと一口にいっても人によって得意なこと、苦手なことやその程度は違うとは思いますが、著者本人が自分の特性と向き合って悩んで試してきたこの解決方法は、自分なりのアレンジができると思います。

先ほど「グレーゾーンと一口にいっても」と書きましたが、学力だって体力だって体重だってなんだって数値をとったらだれでもグラデーションのどこかにいるわけで。自分の特性と向き合って克服するように知恵を絞る、という学びは誰にでも当てはまるものですね。実際に本書のノウハウや考え方をいくつもありがたく使わせていただいていますし、カスタマイズもしています。

ということで仕事術としても心得としても勉強になった本書ですが、それよりも強い印象が二つあったのです。

こんなに「普通のことができない」ことで生きづらい思いをしている人がたくさんいるんだ、ということです。この「普通」が厄介なのですが、誰でも簡単にできると思われているがそれを当たり前にできない人が大勢いること。さらにそれが集団行動などでできないことで、人に迷惑をかける、と判断されてしまうようなことも大いにあるという事実。子供の頃を思い出すと、忘れ物が多い人はいましたし集中力がなく授業中も隣の子にすぐおしゃべりしてしまう子もいました。私も忘れ物は多い方でしたがひとえにナメていたからで、これは忘れていいと自分勝手に判断していたわけです。他人の事情なんて当時は全然思い至ってなかったですね。長距離走でトップとビリには周回遅れに至る大きな差が出るように、数限りなくある「やらなければいけないこと」の一つ一つに得意不得意があって、年に一回の体育祭が嫌な人もいれば、毎日の仕事で怒鳴られている人もいる。そしてそれを克服しようと必死で対策しようとしている人がいる。今さらそんなことを知って愕然としているわけですが、本当に愕然です。

そしてもう一つ、本書のオーディオブック版は本業がナレーターである著者自らがナレーションをしているのです。ご本人のご苦労と試行錯誤、そしてそんな生きづらさを持って日々生きている読者の方へのエールと愛情が本人の声で語られるのです。著者本人ならではの抑揚、感情にあふれていて通勤中やばいです。もう、おかしくなります。

Audible Studios on Brilliance
¥3,000 (2025/05/08 06:30時点 | Amazon調べ)

発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術
中村 郁 (著) かんき出版

コメント

タイトルとURLをコピーしました