読書メモ:なんかいやな感じ

オーディオブック読書メモ

武田砂鉄さんの単行本を読むのははじめてです。ネットの記事などでお目にかかることがあって、むむ、面白いなこの人と感じてはいたのですけどまとまったものを読んだことはありませんでした。毒舌ではなく、批評的に「しっくりいかない感じ」ぐらいのひっかかりを見事に表現している、といいますか。彼の感じる違和感には共感することが多いんだけど、このわずかな引っ掛かりをこんな労力をかけて説得力のある考察にするエネルギーにも底知れないものを感じておりました。いや、あさ〜く思っていただけです。

お笑いのネタでもありますよね、ちいさなあるある一つだけを膨らませて数分のネタにするやつ。私はそういうこだわりを深掘りしていくのも好きなので、そのようなスタイルのコラムニスト?なのかなと思っていたのです。

本書を読むまでは、好きな音楽とかサブカルワードに世代的な近さを感じていたので同世代なんだろうなと思っていたのですが10歳以上離れていました。これはちょっと驚きましたね。私が10代の終わり頃、一番時間もあって、一番興味も吸収力もあったときに浴びていたころ、小学生だったんだよなあ。これ、ちょっと不思議な感じ。

世代論でも、ましてやサブカル本でもなく、どういうことに「なんかいやな感じ」を感じるのか。当事者としての自分の年齢はあるにしても、その感情が芽生える何かについてを丁寧に紐解いていく。その過程で出てくる著者のエピソードで、風景や周りの人たちのものいいなんかもたくさん出てきて、よくこんなに具体的に覚えているもんだなあと舌を巻くのですが、このへんの話は10歳のギャップも感じられて面白かった。

本書の最後にあかされているが、群像の連載にあたって企画の段階では橋本治が上巻のみ書いて絶筆となった「近未来としての平成」の続きの位置付けで依頼されたとのことでした。ああ、この世代ではなくて時代をいやな感じで語るというトリッキーにも見えるアプローチは、型破りな断定を見事に論じ切ってしまう橋本治のスタイルがどこかに味つけされていたのかも知れない。

著:武田砂鉄
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『なんかいやな感じ』
著:武田砂鉄 講談社

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