このようなタイトルの本は、ツッコミどころを見つけるといいますか、「いやいやいや再現性」など斜に構えて読みがちです。あくまで私が、です。半分エンタメ本の感覚で手にとるのです。期待値を上げて、「僕が今年仕事スタイルをがらっと変革して4時に帰ってもこれまでより成果が上がる方法を本書によって身につけるのだ」という気で読むとほぼ間違いなくがっかりするからです。それはそうです、内容も切り口も商慣習の話から政治、国の資源、主要産業、国の規模、価値観やマインドなどなどで変わってきます。googleの成果を出す仕組み、というより間口が断然広いのです。ですので遠いEUの社会勉強とビジネス読み物として楽しもうというのが正しい向き合い方だと思うのです。その中で『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』みたいな傑作にぶつかったら大当たり、だと思います。私のマインドはそんな感じです。
で本書ですが私は面白かったです。デンマークという国は小学生の時から知っているにも関わらず知っていることを挙げろといわれると困ります。場所も、知識も「あのへん」な感じで、肝心のトピックスもスウェーデンとフィンランドと混じりきってしまって、自信を持って「これだ」といえるものが出てきません。恥ずかしげもなく書いてしまいましたが、みなさんそんな感じですよね?私はIKEAがデンマークで、あんなに遊んだLEGOはスウェーデンだと思い込んでました。いい加減ですね。
というわけで知識ゼロからの情報は刺激的で面白いのです。著者はデンマーク人の夫と現地で暮らす日本人。デンマークで働きながら日本人の働き方を引きずっていたらしいのですが、本書執筆を転機にデンマーク人の取材をしながら、働き方もデンマークスタイルにする実験も行ったと冒頭で宣言。自分の身体を張ったおかげでワークライフバランスや仕事へのスタンスの聞き込みがリアルかつ自分ごとになったのではないでしょうか。仕事の効率だけではなく仕事に対する価値観、プライベート時間の考え方、そして組織のチームワークにキャリア感。笑っちゃうほど日本と違うわけですが、だからこそ本当に?と行ってみたくなりますね。なんかきっかけできないかなあ、ないだろうなあ。そこんところ、どうなんだろう、と思ったのは世代間ギャップです。取材対象は現役バリバリのトップやマネジャーが多かったですが、OB世代や学生とかも同じ感覚なのかなあ。
税金や福祉の制度などはこれは個人でどうなるわけでもありませんが、あまり同調圧力やこれまでの日本の組織のこれまでの当たり前に縛られず、さらっとワンチャンいってみる、試してみることができることはありそうです。ひとついえるのは私が毎日4時に帰ったら間違いなくアル中になってしまう。。

『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか (PHPビジネス新書)』
針貝 有佳 (著) PHP研究所
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