Audibleの新着情報を毎週金曜日チェックする習慣になっています。先日もいつものごとくページを開いて、この本のゆるいカバーイラストと星新一の名前を見た時、「そうきましたか」と驚きました。
昔むかし、私が10代だった頃、星新一のショートショートをよく読んでいました。集中力のない青年でも一気に読めて、そしてなんとも奇妙な読後感が残る。その収まりの悪い、もやっとした感覚がクセになる。当時は時代小説や歴史小説を好んで読んでいた記憶があるのですが、星新一のショートショートはお気に入りで文庫を揃えました。
そして今、オーディオブックとしてシリーズで刊行されたわけですが、「オーディオブックにぴったりじゃん!」と膝を打つとともに「そういうことに気がつかなかった自分にがっかりした」という気持ちもありました。別に私が著作権を持っているわけでもないし、何ができたわけでもないのですが、昔愛読した本の中でも抜群にオーディオブックと相性が良いことに気づいていたかったなぁと悔やみました。変な感情ですね本当に。
なぜオーディオブックにあっているかと言うと、まず単純に1話が短いことです。スキマ時間にちょこちょこ読み進めることで、いつの間にか大長編を読み終えてしまえるのがオーディオブックのいいところです。一方でスキマ時間に1話完結が読みきれるというのはうれしい。「途中どういう話だったっけ?」と巻き戻さなくて済むのも、とても相性がいいと思います。
さらに、ポンポン進み行間をあまり意識しなくて展開に委ねて読み進められる点もオーディオブックに向いていると思います。まてよ?ここは、などと立ち止まらずともいいのです。
最後にこれは個人的な話ですが、私にとって一番うれしかったのは、かつて何回も読んだといいながら、表題作を含めてストーリーを覚えている話が見事に一つもなかったことです。本当にフレッシュな気持ちで楽しむことができました。同時発売されている何冊かも楽しみに読んでみようと思います。
『ボッコちゃん』 新潮社 星 新一 (著)
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