クラウドサービスの活用はわかる。ペーパーレス化もわかる。グループウェアの活用やメール配信も理解できるし、AIサービスの業務導入もわかる。でも、それらをひっくるめて語られる「DX化」というものが、どうも自分の中で座りの悪い言葉になっている。もちろん、何となくは理解しているし、よく使っている言葉でもある。「デラックス」ではなく「デジタル・トランスフォーメーション」の略だということだってわかっている。どやってどうする。
なぜしっくりこないのか――その理由がいまひとつまとまっていなかったが、本書を読んで、その答えが見つかった。業務改革はまずブルーカラーの領域、特に工場の仕組み化によって飛躍的に進化した。しかし、その後、日本企業のホワイトカラー業務に関しては、そこから遅れること25年、ほとんど進展がないままこのデジタル時代を迎えている。
……ちょっと待って。失われた25年って、私が就職してからもうすぐ30年になる。つまり、私のサラリーマンキャリアとぴったり重なるではないか。団塊ジュニアど真ん中超ショックなんですけど。それはともかくとして、工場では製造する機械や商品と向き合うため、業務改革が劇的に成功した。一方、ホワイトカラー業務では、相手が「情報」や「人」であるため、DXでは解決できない理由があるという本書の分析には、まさに目から鱗だった。
デジタル時代に突入しているのに、根本的に変われないままでいる――そのもどかしさ、じれったさ。デジタル化しただけでは何も解決しないのに、「DX化」という正義の言葉に潜む危うさに、自分はモヤモヤしていたのだ。DX化すれば効率が上がり、労働時間が短縮され、少人数化が実現する――そんな「目に見える成果」を聞いたことがあまりないからだ。
本来、DX化は目的ではなく手段であり、まず成果を定義しなければならない。それなのに、DXそのものが目的化している語られ方に違和感を覚えていた。このモヤモヤの正体が、本書を通じてはっきりと理解できた。すっきりした。
すっきりしたのは自分の中の読後感だけで、現実の業務はまだすっきりしていないのだけれど。本書が言語化してくれた内容は、会社で話すときの説明や進め方に大いに役立つと感じた。ありがとうございました。

『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか 日本型BPR 2.0』
村田 聡一郎 (著)
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