読書メモ:センスの哲学

オーディオブック読書メモ

本書は著者による哲学3部作の3冊目ということで、つまりはこれで完結してしまうことになるわけで、少しロスな気分になってしまいます。「センス」という言葉を、センス以外の言葉で説明することこそセンスが必要だ、それが哲学することなんだろう。そんなことを思いながら、千葉さんがこの繊細な「センス」というテーマをどのように料理し、どのような構成で魅せてくれるのか、楽しみにしていました。それこそ、センスが問われる挑戦ですよね。あえてこの試みにチャレンジすることに、そもそもワクワクしていました。

今語られている話が全体の中でどういう意味を持つのか、読んでいるときにはわからない。この一つひとつの部品が、どこにどういう目的で置かれているのかわからない。だけど、確かに何かの輪郭にはなっている――その筋道を想像しながら読み進めるのですが、それでもやっぱりつかめない。センスがないんですよ。ただ、おそらく楽しいところへ連れて行ってくれるのだろうと思い、その道中を楽しむしかないのです。

「センスとはリズムである」という話あたりから、まるで目隠しをされて知らない場所へ連れて行かれるような旅の始まりを感じました。そこから先は、もう方向も歩いた距離も全くわからず。そして、これはオーディオブックならではなのですが――途中で振り返ることもなく、行間も感じずに、ただただ手を引かれて歩き続けるばかりでした。どうやってこのパズルを作ったのか、私の頭では全く理解できません。一度ぐしゃぐしゃにしたら、二度と完成することができないような、膨大で緻密なパズルを見たような感覚です。今回も痛快で、痺れるような道中でした。行為としての哲学の醍醐味を味わった気がします。達成感とそして、予定通りのロスが訪れました。

再読を楽しみに、じわじわと忘却の過程をこれから楽しみたいと思います。

そして私は本書を読んで、果たしてセンスがよくなったのでしょうか。それはわかりませんが、芸術作品や映画・音楽などのコンテンツをより楽しめるようになっていたらいいなと思います。

著:千葉 雅也
¥1,700 (2024/12/11 20:26時点 | Amazon調べ)

『センスの哲学』
千葉 雅也 (著) 文藝春秋

コメント

タイトルとURLをコピーしました