そういえばビジネス書らしいビジネス書を読んだのは久しぶりかもしれません。本書は中小企業や個人経営者を対象に、持続可能な「売れる仕組み」を構築する方法を解説するマーケティング書です。著者の谷田部敦氏は、自ら開発した「6マス・マーケティング」を提唱しております。商品の認知、顧客の信頼構築、購入、リピートや紹介のプロセスを6つのステップに分けて、それを順を追って説明しています。
まぁ考えてみれば、私も長いこと出版業界に所属していますが、出版社をはじめとする業界内の多くの企業はまさに中小零細企業で、長らく「マーケティング」という言葉がふさわしいかどうかも怪しい、牧歌的な販売促進を行ってきましたわけです。もちろん現在でも新聞広告など、昔からある広告媒体は活用されていますが、紙面の広告を見ると、私よりも年上の世代をターゲットにしたものが圧倒的に多いと感じます。
ネット広告が存在感を増す中、中小零細企業では、そのようなトレンドに理解があるトップが自ら動くケースもある一方で、人的リソースや予算が不足しているため、PDCAをしっかり回すことが難しい企業も未だ多いのが現状でしょう、うちだけではないはずです、よね?紹介されている具体的な施策としては、SNSの活用、情報発信や広告運用、検索エンジン広告やSEO対策、オウンドメディアの運営、プレスリリース、ECサイトでの直接販売などが業種・業態別に提案されています。
小さい会社ではそれぞれに専門の担当者を配置するのは難しい場合がほとんどでしょう。本書で紹介される方法は、いずれも大きな投資を必要としない手軽さがありますが、全てに手を出すと作業が回らなくなってしまう可能性もあります。優先順位を見極めるためにも、自社のサービスや業種に関連する部分をチェックして取り組み始めるのがいいのかなと思います。また、多岐にわたる業界の成功事例が多数紹介されており、具体的なイメージをつかみやすい内容になっています。

『小さな会社の勝算 90日で売れる仕組みになるデジタルマーケティング』
谷田部 敦 (著) かんき出版
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