昔のガチャガチャとは違うのは理解しているんですけど、確かに昔の文房具屋や駄菓子屋の店前に置かれていた佇まいとは随分変わりました。ショッピングセンターや量販店、さらには専門店までできているのも認識していました。キャラクターグッズはもちろん、謎に精巧にできた日用品のフィギュア、シュールなものまで異様な種類のガチャガチャがあるのもなんとなく知ってはいました。だってあんなにたくさん台が並んでいるわけで、もし目当てがあってそれを探すのだとしたらそれだけでも大変だろうなと思っていました。というぐらいなので私本人はガチャガチャを随分回していません。最後にやったのはいつだったかも覚えてないぐらいです。
面白いなと思うのは、ガチャガチャっていってみれば独特の自動販売機の形態ですよね。私がはじめてそれを認識したのは小学校1年生のことでしたが、その頃は10円玉2枚、20円のものでした。「明日のジョー」のアニメのフィルム「っぽい」もの、色々なシーンが入っていて、ねだって随分やってもらったのを覚えています。硬貨をうまく挟み込む工程、ハンドルを回す時のゴリっとした負荷、ゴロンと転がり出て落ちる音、非力な子供の力でカプセルをひねりあけること。そして成果物の検証。単純ではありますが、ひとつひとつのプロセスがありありと思い出されるのは、やはり当時楽しく興奮していたからなのでしょうね。また、肉体的な「行為」が伴っていたのもあるのでしょうね。似たものとしてくじ引きの「ガラガラ」も、回す感覚とか、玉がコロっと落ちる感じや音、リアルに思い出せますもんね。そういう意味で、私の中では懐かし子供時代の記憶でとどまっているものでした。
数年後のキン消し(キン肉マンのゴムフィギュア)ブームももちろん経験しています。でも私は当時から、その後今に至るまでガチャガチャをやらなくなった契機になることがありました。鶴見に住んでいた叔父がちょっとしたお店というかなんというかをやっておりまして、会う時にいわゆるしょたれのガチャガチャの中身をこれでもか、とお土産に、雑なその辺のビニール袋にどっさりくれたのです。キン消しもたくさん入っていました。叔父は中身の目利きはゼロで、多分捨てるのも勿体無いからという感じだったんだろうと思いますが、キン消しやスーパーカー、謎のキャラクターがいっぱい。そしてオフィシャルなやつと海賊版のやつも玉石混交でした。で、どちらかというとパチモンの方がレア感があったりして、子供ながらにその辺を仕分けして友達にプレゼンしたりしていたわけです。何しろ頂き物で大人買いしたようなコレクションになったので、自分の中でも収まり悪く、収集欲も、課金してゲットする欲も無くなってしまったのです。買ったのはboxyのボールペンぐらい。消しゴムを弾く遊びで使ったのです。
そんな昔のことまで思い出させるパワーがガチャガチャにはあった。メディアといって全く過言ではないと思います。幾らかのノスタルジーも残しつつ盛り上がってくれたらいいなと思います。この辺は世代トークいくらでもいけるなあ。
本書はレトロ情緒の本ではないです。現在のガチャガチャ事情。メーカーのものづくりや企画・マーケティングの話、設置店の変遷と今のトレンド。ユーザーの楽しみ方の変化などあの頃とは比べ物にならないほど広がり細分化した市場の現在とこれからについて語られます。こちらがメインです。
『ガチャガチャの経済学』小野尾 勝彦 (著) プレジデント社
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