水野敬也さんはお会いしたことはないのですが昔から勝手に尊敬しているのです。尊敬というとちょっと違いますかねえ。ファンなのです。マニアックに追っかけているわけでは全然なくて、本も多分半分も読んでいなかったり、ブログも読んでいないし(検索等で引っかかって見つけると読んでしまいますが)どこがファンなの?といわれるかもしれませんがファンなのです。水野さんの本や文章を読んでいる時間が幸せなのです。でもうまいこと言語化できないんですねえ。だからベタにファンですとしか言えないのが口惜しいです。
出会いがデビュー作『ウケる技術』ですよ。ビジネス書という言葉が一般化し始めた頃、ハウツー本からビジネス書というジャンルが独立した頃です。ビジネス書の出版社からビジネス書みたいな切り口で『ウケる技術』が発売されたわけです。真面目なのかふざけているのかわからない、試されてる感がありました。そして読むとウケる技術だけではなく受けたい欲望まで見透かされて言語化されているように感じられ、面白くも「こわ!」とおののいた記憶があります。そしてビジネスハウツーとして成立しちゃっているところも「すご!」でした。
エンターテインメント的に面白い本、というか笑える本って、私が子供の頃はもちろんギャグ漫画は筆頭にありましたが、それからビートたけしのラジオの本とか、VOWとかは休み時間に友人と大笑いして読んだ記憶があります。水野さんの文はその頃の大笑いの感覚で笑ってしまうのです。
たとえば、ブログのこの記事「テンガ事件」とか、どうですか?ちょっと、品としてはダウナー系のネタですが、こんな文体なかったではないですか。改行の多さもブログ文体先駆けです。昭和軽薄体とはまた違う。昭和の文章作法には求められる結論やオチなどはありません。話し言葉だけでもない、過剰な自己意識の移ろいが克明に描かれ、その流れの中で一回は奇想といいますか変態的飛躍がほとばしりやられます。
書籍はコンセプトがしっかりと立っていますが、その中で『夢をかなえるゾウ』シリーズでは過剰にもほどがある不条理ギャグマンガのようなドタバタが波状攻撃でもう苦しい。オーディオブックでは関西弁も音声でずばっと入ってくるので笑いをこらえる苦しみまで味わうことになります。
本書は、そういう意味では穏やかな、4つのアプローチからなる自己啓発書です。余韻が残る4つの寓話集です。うなりました。それだけ?
『四つ話のクローバー』 水野敬也 文響社
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