佐藤優氏の著作はオーディオブックで読書をするようになってからはじめて読むようになりました。博覧強記で内容が難しい印象があったので遠慮していた、というよりも佐藤氏の眼ヂカラに気おされていたからかもしれません。食わず嫌いですね。実際に読んでみると、自分が全く知らなかったことだらけで、難しさより面白さが先にたち、佐藤氏のインプット力と考える力にひれ伏しつつ充実な時間を得ることができています。
そういう意味では本書は異色、というかコンセプチュアルな一冊です。哲学と入っているものの、 仕事に悩む君江と言うことで、米間対照的にも思える仕事と哲学について書かれた本です。 働いてはいるが、まだキャリアは浅い青年と敏本人が登場人物としていて出ていて、いわば敏がドラえもん青年がのび太 みたいな感じで、青年がぶつかる職場やキャリアの悩みに佐藤先生が答えていくと言う形式になっています。キャリアのこと、お金のこと、人間関係など、一つ解決したと思ったらまた次の悩みが現れ、「ドラえも〜ん」とアドバイスを求めに行くのです。青年の悩みに答えるにあたり、佐藤先生は哲学者の言葉を引用し、その思想のエッセンスを紹介します。あたかもひみつ道具のようにするりと取り出します。
哲学者の名前も名言の数々も知らない青年は、そんな難しいことをいわれても、といいつつ古今東西の賢人の言葉に触れ、「これからはこうしてみよう」と少しずつ変わっていく成長ストーリーです。悩みができるたびに、哲学全集にこたえを求めて探し始めても絶対に辿りつかないでしょう。そういう意味ではこれほどタイパのいい本はない。ちょっと美味しすぎではないでしょうか、と。ドラえもんがそういわれたように「それじゃのび太が成長しないでしょ」という批判もありそうです。でもですね、現代の30前の若者の悩みにも哲学からアドバイスを紐解くことができるのだ、という古典(だけではないですが)の懐の深さを見せつけるものでもあります。Q&Aでこうしなさい、という答えがあるものではない、ということも含めての学びだと思います。
『仕事に悩む君へ はたらく哲学』 単行本 佐藤優 (著)
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