死生観などは普段ルーティーンで考えるものではないので、たまにそれを想起させるようなタイトルの本を入れておくだけでも「気にしている」ことになるのでいいのではないかと思います。情報として、というよりは死をどこか見えるところに置いておく、ということで自分ごとであることを忘れないようにする、というささやかなtipsのつもりなのですが、特にオーディオブックのストアは聴き放題なので聴ける時間を考えずにどしどしライブラリが膨らんで、どこか見えるところにはなってないんですけどね。さらに最近はこの読書ログも書けてない本が積もってきて、あちらこちらが滞っています。
本書は死生観というより「人が老いるとどうなるか」についてリアルな現実を教えてくれます。医師としてケアが必要な高齢者を至近距離で見続けた経験を持つ著者ならではの描写はとても生々しい。老いに対する人々の心受け止め方、そして医学的な意味での老化、あわさると人はどう振る舞うのか。ああ、確かにこの人がこうなったらこう言いそうだわ、など浮かんできそうな、究極の「自分ごと」としての自我のありようが客観的に詳らかにされ、自分だったらどう受け止めるだろうか、どんなこといっちゃうだろうかと心配になったりもします。また、それもわからない状態もあります。認知症が進行していて、さらに体がいうことを聞かなくなってきた状態の場合。著者は「わからなくなったら苦しまない」とさらっとおっしゃいますが、そうなった状態で周りにどう振る舞うのか不安になりますよね。でも、そうなっちゃったらそんな状態です。そんな心配も、本人はなくなるわけです。
今なら、心構えもそうですし、体のメンテナンスも準備はできます。想定される事態への周りへの用意もできるでしょう。老いと衰えがどのような順番でどのように来るかはわかりません。本書に登場するとても人間くさいエピソードを教科書に、イメトレをしておきたいと思います。
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