日本でのaudibleのサービス展開について
世界には数多くのオーディオブック販売プラットフォームがありますが、最大のスケールでサービス展開しているのがaudibleであるのは間違いないでしょう。Audibleの日本でのサービスは、2015年に開始されました。利用者は月額1,500円で、amazonストアに紐づいたカタログから本を選び、聴き放題の対象となっているオーディオブックを聴くことができるサービスです。2018年にはコイン制に変わり、会員に毎月配布される1コインで任意の本を購入できるシステムへと変更されました。しかし、2022年には再び定額聴き放題サービスに戻り、より多くの本を楽しめるようになりました。ほとんどのタイトルが聴き放題可能になっているので、ポッドキャストも含めてヘビーユーザーも増えているだろうと推測されます。新しく加わるラインナップの数もサービス開始時より明らかに増えている印象です。
一方でaudibleは人間の声ではなくデジタル技術で合成された「デジタル音声」を商品としてこれまで認めてきませんでした。一部北米のKDP(Kindle Direct Publishing)で解禁されたという記事は目にしましたが、一般の書籍化されたパッケージに関しては制作会社がどこであるかに関わらず商品として出されてはきませんでした。日本ではKDPでも現状認められてはいません。
デジタルボイスというナレーター名を発見した
そんな中、1ヶ月前ぐらいのある日audibleの新着商品情報を眺めていた私は驚きました。ある新作の商品のナレーター名が「デジタルボイス」になっていたのを発見したからです。そのような表記は初めてみました。ニュースリリース等でも聞いたことがなかったので、密かに実験をしているのかなと思い、この新しいナレーターの作品はいくつ出ているのか調べてみました。点数は約20点、出版社は5〜6社に分かれていましたが、どれも日本では「新書」と呼ばれる書籍のサイズが同じ規格のラインナップでした。ということは、audibleが特定のジャンルに絞ってこのデジタル音声が市場でポジティブに受け入れられるか、それとも反発されるのか試しているのでしょう。audibleの会員である私は、先ほど見つけたデジタルボイスオーディオブックのカートをクリックして早速聞いてみることにしました。

デジタルボイスのオーディオブックを聞いてみた印象
デジタルボイスをはじめて聴いてみたわけですが、私の印象では「別に嫌ではない」という印象でした。もう少し具体的にいうと、等速で聴いた場合は機械が読んでいる感じが結構あります。機械的、というのは音声そのものというよりは間と抑揚が均一だからかもしれません。ただこの違和感は私が普段聴いている1.5倍の再生速度にするとほぼ気にならなくなりました。人間の声のナレーションにその人の特徴があるように、デジタルボイスのナレーションに慣れた、という部分もあると思います。情報を得るという点において特に不満はないですね。会話がある小説や、子供向けの絵本などは味気なく感じるかもしれませんが、知識を得るための読書なら問題ないと思います。音声の質とは別の話になりますが、本書のテキストがAIによって書かれていると錯覚する瞬間が何度かありました。
私の個人的な感想は今述べた通りですが、日本のユーザー総体がどのような反応を示しているのでしょうか。レビューを読む限り、概ね好意的に受け止められているように見えます。残念だった、という感想もありますが少数派でした。ひょっとして人間の声ではないことを気づかずに聴き終えた人もいるかもしれませんね。この実験がうまくいっているのなら今後も作品数は増えていくでしょう。制作コスト、特に制作期間がどれだけ圧縮されるか、については私も興味深く観察していきたいと思います。
続報を書きました。
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