前回ご紹介しました『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』は、仕事に向き合うスタンスから、成果を上げるための発想、成果を生む判断をするための考え方をHacks的に並べたパワフルな本でした。内容密度の濃さと、そう考えるに至ったエピソードや実際その考えを使ったエピソードも同時に語られており説得力もありました。間をおかずに、同じ著者が書いたこの本を続けて手に取りました。いつものくせで、書籍の情報をろくに見ないで読み始めるわけですが、今見たらこの『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』の方が先に出ていたんですね。内容的に正続というわけではないので違和感も特にはありませんでしたが。
タイトルからもわかりますが、本書は『時間最小化〜』とは違って経営書というカテゴリに入ります。売上を上げようと日々頑張っていてそれが当たり前だとなっているところに売上最小化という初めて耳にする言葉がタイトルとして入ってきます。利益最大化に関しては言葉尻では当たり前のこととして皆認識すると思いますが、「売上最小化」とセットとなるとやはり新しい響きとなってうつりますよね。ん?反対じゃない、まさか間違えてない?と二度見するぐらい、当たり前に自然にタイトルに入れられているのです。
売上の昨年対比、昨対という言葉は日常的に意識されていると思います。目標といえば売上金額が正面に来ていますし、それを達成するために目標管理をしていて、ブレイクダウンした部署そして個人が目標達成のために頑張っている構造ではないでしょうか。その当たり前はかなり強靭でそこを誰も疑わない、疑ってはいけないという忖度も働いているのではないかと思います。売上が最上位概念で、その売上から使ったお金が引かれるんだから利益確保のためにお金は節約しようね、使いすぎないようにね、というのがなんとなーくのコンセンサスになっているのではないでしょうか。
本書のamazonの内容紹介を拝借すると
◎株価上昇率日本一(1164%)の超効率経営!
◎会社の弱点が一発でわかる「5段階利益管理表」を初公開!
◎史上初! 無一文から一代で4年連続上場!
とありますが、まあ普通じゃないよね、ぶっ飛んでますよね、という印象になりますよね。だからこの人がビジョナリーなのか、そろばんの達人なのか、あるいはインテリヤクザなのか、とにかく何か特別で普通じゃない経緯ないし環境があったのではないか、そうであってほしい、そんなの人が真似できないぐらいずば抜けた才能か、とてつもない運の良さということにしてほしい。私がそんな結果を出せてないのは私のせいだと思いたくない、素でどこかそう思っている自分がいます。恥ずかしいですが、います。私の尊厳を保ちつつ私の成果をどうにか変えるならば学びの精神で読んでみるしかないでしょう。そうでしょう。
というわけで通念をぶっ壊されてしまって、どうすんのこれ。読んでしまったけどどうすんのこれ。困ったしまうけど納得してしまった以上どうするのこれ、という大混乱に陥れられてしまったわけですよ。どうしてくれるんですか。
EC事業という、近年新しくできた販売形態だからこそこのように考えることができたという側面はあるかもしれません。入り口のところから事業を始められたので既存の考え方に染まらずに試行錯誤されてきた、ということはいえるかもしれません。だから既存の業態や販売形態でこの考え方を取り入れることができないというのは言い訳になってしまうでしょう。無理というのは簡単ですが思考放棄になってしまってはいけないでしょう。経営書として「俺経営者じゃねーから」と人ごと領域に押しやってしまうのがはばかられるほど明快でロジカルでガンガン詰められているようで本当に困ります。サラリーマンたるもの言い訳を本業にやらせていただいておりますのでガチで追い詰められると本当に困るんです。
ベストセラーになっている本を今更こんなご紹介の仕方もなんですが、本書の読者ターゲットかどうかのリトマス紙としては本書目次を素で今一度見てください。ピンとしてしまった方はもう仕方がない、読んで同じようにうちやられてみませんか。お友達募集いたします。次は3冊目です。

『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』
木下 勝寿 (著) ダイヤモンド社
audiobook.jpへのリンク
audiobook.jp
コメント