生きる死ぬ、の話はついつい手が伸びてしまいます。医学的なアカデミックな話、たとえば先端医療の知識もそうだし、宗教や死生観の話もあるし、生物としての寿命の話もありますよね。そういえば『死は存在しない』という大真面目そうな本が出ていて、売れているのですよね、広告をよく見かけました。先入観でとんでも本かと思っていたけど、実はちゃんと内容を見てないのですが、どちらなんでしょう、今度読んでみようかな(そういう時は読まないことが多いですが)。
本書は自宅訪問医(というのかな)の経験がある著者が、特に終末期に医師はどう判断して患者やその家族にどう提案、アドバイスをするか。今あたり前に医療現場としてやっていることを伝えながら、週末医療において医療が貢献できること、できないことについて数々のエピソードを紹介しながら語られる、という内容です。特に延命治療や蘇生治療については事例も丁寧に、そしてそれがゆえに生々しく説明されています。自分も例えば親がそのような状況に置かれたときに、どう判断するだろうかと想像しながら読みました。そして、自分が当事者になった場合、どこまで判断できる状況でいられるか、近くに誰がいてくれるか、こりゃわかんないですね。医療従事者の立場として、延命に意味がないが儀式的にやっていることもあれば、手術のおかげで明らかに身体的にもつらく、そして退院することのない余生を送るのが「やる前からわかっている」ことも望まれればやることになる、と。考えさせられます。
いざ自分で振り返ってみると判断できる限りは本書で著者がおすすめしているように、往生際を医療に頼りすぎないようにしたいなと思いましたね。お医者の立場も、家族の手前の演技、いやお作法というべきか、そのような振る舞いをしなくてはいけないところ、これは貴重で面白いです。また人間が死にゆくプロセスを医学的に分解、言語化したところ、これはいわば生物の授業に近いですがこんなことも初めて知ることばかりで勉強になりました。
『人はどう死ぬのか』
久坂部 羊 (著) 講談社現代新書
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