外資系企業やベンチャーは独特の制度やカルチャーが存在すると聞くことは多いです。それが売り文句というか有名なものもありますし(googleはビジネス書の定番の制度がたくさんありますね)スタートアップあるあるみたいなものもあるでしょう。そういう意味ではアマゾンの制度でみんなが知っている代名詞みたいなものはないような気がします。day oneのキャッチフレーズや、パワポ禁止とかはありますけどいわば点であって、それがカルチャーかというとそうでないような。結構特徴がありそうだけど謎な会社、という印象が私にはありました。
著者は同社の日本法人立ち上げ時から参画し、物流ネットワークといういわば心臓部分を担ったキャリアで、人事を担当されていたわけではないですが、あまり語られることのないアマゾンのカルチャーやそこからブレイクダウンされた人事の採用、育成から配置までの制度の紹介と進化について解説されています。冒頭から「アマゾニアン」という言葉が出てきてたじろいだりします。仕事柄アマゾンの方とも接する機会があるのですが、私たちアマゾニアンは〜というくだりは聞いたことありませんね、当たり前ですね。
全部で14の項目からなる独自のリーダーシップ理論(OLP=our leadership principle)の紹介によって、同社が何を大切にしているかという基準がわかります。その価値観に基づいて、人材の採用から育成、配置がどのように行われているかを運用にあたっての事例も紹介しながら解説されます。理念と実践の掛け合わせが考えられているなあと驚嘆するばかりです。本書が発売されたのは2022年ですが、著者がアマゾンを辞めたのは2016年なので、「在籍当時はそうであったけれどさらに進化しているだろう」というような表現も何回か出てきました。常にバージョンアップを続けるというのもカルチャーなのですね。ちなみに最新版のOLPはこちらにアップされていました。
止まることなく泳ぎ続け、常に体を大きくし続けるということにやりがいを感じる人、拒絶反応がある人様々いらっしゃるでしょうが、世界指折りのザ・メガベンチャー化を一代で成し得たその仕組みを知っておくことはありだと思います。
『amazonのすごい人事戦略』 佐藤 将之 (著) 東洋経済新報社
audiobook.jpで見る
コメント