バラエティ番組でタレントさんにあだ名?をつけたり、大喜利が独特のセンスで面白かったりと、「言葉」がらみの活躍も目立つ滝沢カレンさん。少し前に『カレンの台所』というレシピ本が出ましたが、調理方法のたとえの独特さと造本のこだわりで話題になりました。
おバカタレント的な言葉の無知とか誤用ではなく、またずれを狙っている感じにも見えず。大喜利のように、広く一般に届く前提で面白みを考えるという目的が明確かつ高度な課題でも結果を出しているということは計算ができているということでもあり。これはまた新しいタイプの旨味成分が出てきたなと思いました。本当、意外なところから出てくるなあ。
そもそもタイトルの『馴染み知らず』からして、ちょっと不思議な響きがある。馴染みがないとはいうけど、馴染み知らずという表現は使ったことがない。試しに検索してみたら、本書に関する検索結果しか出てこない。馴染み知らずの言葉なわけです。そのへんからいきなりもう面白い。内容の方は、すでに発表されている古今東西の小説から着想された滝沢カレンさんのオリジナルストーリー。元の話を知っているものもあり、知らないものもあり。元タイトルはこんな感じ。
沼田まほかる『九月が永遠に続けば』
中島京子『妻が椎茸だったころ』
カフカ『変身』
エドワード・ゴーリー『うろんな客』
ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』
ウェブスター『あしながおじさん』
ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
江國香織『号泣する準備はできていた』
サリンジャー『バナナフィッシュにうってつけの日』
与謝野晶子『みだれ髪』
小林多喜二『蟹工船』
江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』
小川洋子『薬指の標本』
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
本谷有希子『生きてるだけで、愛。』
不思議なテイストだったりシュールな設定だったり破天荒なシナリオだったり。これが本家のものなのか滝沢さんがぶっ壊しているのかは両方読み比べないと判断できないが、それを確かめるために聖地巡礼したいなと思われるぐらい、私は楽しみました。強いていうとすれば、私はオーディオブックで聴いたのでブツとしての感慨はなかったんだけど、不思議でおしゃれな造本だったらまた面白かったんじゃないかなと思いました。創刊タイトルとして肝入りのラインナップだとは思うけれど、新書はちょっと勿体無かったのではないかなあ。
馴染み知らずの物語 (ハヤカワ新書)
滝沢 カレン (著) 早川書房
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